車と人でごった返すサービスエリアの駐車場を縫うように歩いていた恵美子が振り返った。
「本当にここで・・・・・・」
振り返った先―――遅れて歩いている清三に向かって言った。
「やめる?」
大股で恵美子に追いついた清三がニヤリと笑って答えた。
「時間が掛かると変に思われるから――――――するなら早く・・・・・・」
「そんなにヤリたいんだ。やっと恵美ちゃんの本音が聞けたな」
顔を赤らめる恵美子。その短パン姿の全身を清三の熱い視線が捉える。
「さっきの染みになってませんか?」
「うーんちょっとだけ。シャツの裾で隠れてるから大丈夫だ」
歩きながら距離を縮めた2人は、周りから見れば夫婦かカップルにしか見えない。
「あの――― もし勘違いしてたらなんですが・・・・・・私は別に大人しい女じゃないんです。梨花は知ってるけど、結婚前にはそれなりに遊んでたんですから」
「急にどうしたの?」
「川野さんは私のことをどんな風に見てるのかなって」
「エロい人妻」
「―――もうぉ! そんなにエロくありませんよ」
「うそ? 玩具とか好きそう」
「もう~、周りに聞こえます」
「そういや独身時代には梨花も一緒に遊んだの?」
「それは、内緒です」
「まあいいや。梨花は真面目すぎる」
会話の端々にお互いの欲情が見て取れた。恵美子は人知れず陰部を濡らし、清三は股間を熱く硬くした。
「あっちのトイレに行こう」
人混みの中で淫猥なコミュニケーションを取る2人。雄の衝動に突き動かされた清三が恵美子の腕を取った。
が、直前までの雰囲気を変えた恵美子が急にその場で立ち止まった。そして自分に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
「ま、待ってください。き、聞いて、ください。私は家庭を壊すつもりはないし、親友の梨花を悲しませるつもりもないんです。だからこういう事はこれが最後に・・・・・・」
興奮が津波のように押し寄せる恵美子にも理性が残っていた。不倫の沼にハマる事を回避しようと抵抗する。
「―――いいよ」
誘っている清三の返答は以外なものだった。提案をあっさりと受け入れたのだ。
拍子抜けした恵美子は呆けた表情のまま腕を強く引かれて歩き出した。
◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇
サービスエリアのレストランなどが入る建物に隣接している規模が大きなトイレ―――観光バスから降りた団体客などで賑わい引っ切り無しに出入りが続いている。
2人はそのトイレを通り越して駐車場の外れに近い比較的客の少ないトイレへと向かった。
近くの芝生にドッグランの設備があり、利用客が飼い犬を遊ばせていた。
「本当にこのトイレでするんですか?」
「恵美ちゃんだってヤリたいんだろ。男女共用の多目的トイレなら一緒に入れる」
潤んだ瞳で恵美子が聞いた。
清三は恵美子の腰に腕を回して体を引き寄せ、耳元に熱い息を吐きかけるようにして答えた。
「一緒だと怪しまれるから、俺が入って暫くしたらノックをするんだ」
目指す多目的トイレはタイミングよく空室だった。
段取りを説明した清三は、何食わぬ顔でトイレの扉を開けた。
そして少し離れた恵美子に向かってウインクしてから個室の中に消えたのだった。
客でごった返すサービスエリア―――。
お互いの伴侶を車に残したまま、2人の共犯者は淫猥な計画を実行に移す。
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