週末の金曜日―――。
昌義が長男の嫁の意外な趣味を知ってから1週間が経過していた。
休憩中の社員食堂で日替わり定食を食べていた昌義は、テレビの画面に流れるある事件のニュースに釘付けとなっていた。
―――この家の主婦○○さんが殺害された事件で、○○警察署は先ほど同居の義父○○○○を殺人の容疑で逮捕しました。犯人の認否は明らかにされていませんが、この事件は思わぬ展開を―――
今年の梅雨時期に起きた殺人事件だった。テレビのワイドショーなどでは、当初から被害者家族のただれた関係性について大きく取り上げ、何かと話題になっていた。
被害者は行方不明になっている夫の父親と同居していて、そういう関係だった、と近所では噂になっていたというものだ。
当然、犯人は被害者の義父である、という論調の報道がなされていたのだが。
テレビ画面には報道陣に取り囲まれた、犯人を乗せた警察車両の映像に続いて、写真から切り取った被害者の顔画像が流された。
整った顔の美しい女性―――、自分の悲惨な末路を知る由もなく笑顔で写っていた。事件後の報道などで何度も繰り返し流され、昌義も目にしている。どことなく長男の嫁と似ている印象を持っていた。それに、犯人と被害者の関係性を考えると、どうしても他人事とは思えなかった。
箸を止めてテレビ画面に釘付けになっていた昌義の頭の中に自然と美智の姿が浮かんできた。
―――自宅マンションの居間で薄っすらと汗を纏って子供に乳をやっている。疲れた様子で、ほつれた前髪をかき上げれば、潤んだ瞳が露わになった。その下の泣きぼくろが、普通の主婦にはない妖艶さを醸し出していた―――。
ほかの社員が食事を終えて席を立つ中、昌義の股間は場違いに熱くなっていた。
◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇
昌義が帰宅すると台所に美智が1人で立っていた。
「お帰りなさい、お義父さん」
「ただいま。おや、母さんは?」
「お義母さんは和義さんのリハビリです。もうすぐ帰ってくると思いますよ」
「歩けるようになるといいが・・・・・・」
「そうですね。いつまでもお義父さんとお義母さんに頼ってばかりいては―――」
「―――いや、そういう意味ではないよ。大丈夫だから、美智さんは要らぬ心配はしなくていい」
「ありがとうございます、お義父さん」
美智には0歳児の子育てがあった。
そのため和義のリハビリには、昌義の妻で照子が付き添っていた。
夕食の準備中だった美智は、実の娘のように接してくれる昌義の言葉を素直に受け取った。そして会話に一区切りがつくと流し台の方へと向き直った。
一旦、自室へ消えた昌義は通勤鞄を置くと、再び美智のいる台所へ戻った。冷蔵庫を開けて冷えた麦茶を取り出しながら、夕食の準備に追われている美智の背中にそれとなく視線を走らせる。
いつもの半袖シャツにホットパンツという軽装で、エプロンはなし。半袖シャツ越しにブラジャーが薄っすらと透けて見えていた。
美智に気付かれないように視線を下ろした昌義は、ホットパンツ越しの臀部を視姦する。そこには手足の長い美智の体型にはやや不釣り合いな大きさの尻。健康な男なら、誰でも手を伸ばして触ってみたいという欲求に駆られるであろう魅力的な桃肉。
その熟れた果実のような尻が、美智が足の重心を置き換える度に小刻みに揺れ、不謹慎にも義父の目を愉しませた。
「―――うん!? お、お義父さん?」
熱のこもった視線を本能的に感じ取った美智が、後ろを振り返った。その瞬間、昌義の視線が泳ぎ、そのまま宙を彷徨った。
「っあ! いや、その―――」
「どうかされました?」
誤魔化すように言った昌義は赤面した。
まさか義父が自分の身体を視姦して欲情していたとは思わない美智は、呆けた顔で聞き返す。
「み、美智さんは本当に頑張っているなと―――」
「やめてください、お義父さん。迷惑を掛けているのはこっちなんです。本当にお義父さんとお義母さんには感謝しかありません」
「何を言ってるんだ。迷惑だなんて思ったことは一度もないよ。私たちは親子じゃないか。たとえ血が繋がらなくても、私は美智さんのことを本当の娘のように思っているよ」
そう言った昌義の視線は、美智の大きく膨らんだ胸元へ注がれていた。
自身の魅力に気が付いていない美智は、掛けられた言葉に感動して義父の不謹慎な視線に気が付いていなかった。
「お、義父さん・・・・・・」
目頭を手で押さえた美智の言葉は続かなかった。
「そうだ、今夜は一緒に映画を観ようじゃないか」
「・・・・・・でも、私が一緒だとお邪魔では?」
「この前、言っただろう。孫の面倒は任せなさい。介護と子育てに追われてる美智さんには気分転換が必要だ」
「そ、そうですか? では、お言葉に甘えて――― よろしくお願いします」
映画鑑賞の約束を取り付けた昌義はゴクリと生唾を飲み込んだ。自分にとっては長男の嫁。大切な義理の娘である。
しかし女性として魅力的にすぎる美智との共同生活で、たびたび湧き上がる不謹慎な感情を抑えることが難しくなっていた。
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