義父はパンパンに張った長男の嫁の乳房にむしゃぶりつきたい! 第24話(最終話)

NTR官能小説

 マンションの周辺にあった桜の木は、週末の雨で満開の最中にあった純潔の花を散らしていた。

 今年60歳になる昌義は、来年の春にようやく定年退職を迎える。とは言っても、退職金は微々たるもので、同居の家族が増えたこともあって悠々自適な生活が待っているとは言えない。定年後は会社の関連先で働くことを模索していた。

 社員食堂で日替わり定食を味わっていた昌義は、いつものようにテレビ画面に目をやった。

 ―――昨年の6月にあった当時※※歳の主婦※※さんが殺された事件で、※※地方裁判所は被告人である舅の男に対して懲役18年の判決を言い渡しました―――

 昨年の梅雨時期に起きた殺人事件だった。テレビのワイドショーなどでは、当初から被害者家族のただれた(・・・・)関係性について大きく取り上げ、何かと話題になっていた。

 舅の男が肉体関係にあった同居の義娘―――つまり家族構成の似ている鈴木家に当てはめてみれば、昌義が長男の嫁である美智を何かの理由で手にかけた、ということになる。

(たしか昨年も社員食堂でニュースを見た気がするな・・・・・・)

 判決のニュースのあと、被害者の顔がアップになった写真が流れた。整った顔の美しい女性―――どことなく長男の嫁と似ている、と昨年と同じ印象を和義は抱いた。

(うちは大丈夫だ。美智さんは嫌がってないし、それに和義はあの体だ。私は欲求不満の美智さんを慰めているだけなのだから・・・・・・)

 陰鬱なニュースを目にした昌義は、自分勝手な考えを頭の中で巡らせ気持ちを切り替えた。今夜は、妻照子がいないのだ。マンション自治会の温泉旅行で久しぶりに家を空ける。

(今夜は一緒に風呂に入って、それから――――――)

 夜の事を考えていた昌義は、食べ終わってもすぐには椅子から立つことができなかった。若手社員の訝しんだ視線の中、勃起が治まるまで社員食堂に居座り続けた。


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 定時に退社した昌義は、駅前のコンビニで強壮ドリンク2本購入した。

(美智にも飲ませてやろう)

 普段から外では真面目で温厚な一面を見せている昌義だったが、長男の嫁の体を想像して帰宅前だというのに色欲に染まった表情を浮かべる。目の前の女性店員から嫌悪の表情を向けられ急いで会計を済ませた。

 店の外へ出た昌義は、そのまま人の流れに乗って改札を目指す。
 駅舎に入り腕時計で時間を確認したところで、ふと誰かに見られているような視線を感じた。その場で振り返ってみたが見知った顔はなく、すぐ後ろでつんのめるギャルっぽい女子高生に睨まれた。

 改札を抜けホームへと上がる。
 定年前の平社員には残業するほど重要な仕事は回ってこない。いつもどおりの時間帯。座席の定位置に座りたいがため、一番乗りできるいつもの位置をキープした。

 ―――特急電車が通過致します。危険ですからホーム黄色の線より後ろへお下がりください―――

 アナウンスが聞こえた昌義は、半歩だけ後ろに移動した。減速することなく通過する電車の風圧には毎回恐怖を感じる。

 ―――ゴォー、ガタガターーー

 駅に入ってくる特急電車の先頭が見えた。
 その時、斜め後方に人の気配がした。停車する電車の扉の位置―――そこにはいつも行列ができ、いつも先頭に立っていた。だから、その気配に注意を向けることはなかった――――――。

「後のことは心配いらないから・・・・・・」

 それはホームに残った男・・・・・・・・が発した精一杯の手向けの言葉だった。

 そして声を掛けられたと同時に振り返った昌義の体は、次の瞬間、宙に踊っていた。上半身を捻り、上げた両腕を揺らして不恰好に・・・・・・。

「きゃあああーーーーーー!」

 誰かの金切り声がホーム上に響き渡る。緊急を知らせるボタンが押され、通過するはずの特急電車がホーム上に停車したのだが・・・・・・昌義の体を巻き込んだ先頭車両は、すでに通過する方向の一番外れにあった。


 ◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇


「―――えっ!? そ、そんな、お義父さんが!? あ、あなた、ほ、本当に!!」

 夫から連絡を受けた美智は、スマホを耳に当てたままその場で立ち尽くす。今夜は義母が旅行でいない。いつもとは違う献立を考えていた美智は子供を連れて夕食の材料を買うために外出中だった。出掛けに和義から用事を頼まれて遅くなっていたのだ。

「警察から連絡がきて、それで持ち物からたぶん親父に間違いないって・・・・・・」

「あ、あなた、すぐに帰るからしっかりして。それからお義母さんには?」

「まだ連絡してない。警察が来て欲しいって・・・・・・」

「わかったわ。とりあえず帰るから待ってて」

 夫の用事を中断した美智が急いで帰宅すると、介護ベッドの和義は上を向いたまま静かに泣いていた。


 ◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇


 ―――昌義の死から数日後。

「ホームが映るカメラには、鈴木さんの転落の様子が映ってまして」

 鈴木家を訪れた刑事の口から驚くべき話が語られた。

「えっ!?」

「うっ・・・・・・」

 驚いて目を見張る美智と、嗚咽を堪える照子。
 介護ベッドの和義は能面のように表情が固まったままで、その内心を窺い知ることができない。

 黙っているほうの年配の刑事が、明らかに和義の顔を見ていた。

「まあ、遠目に映ってる程度でして・・・・・・転落する直前に鈴木さんの後ろには誰かがいました。いろんな可能性が考えられるのですが、たとえば後ろの乗客の体が誤って当たって押し出されたとか、それとも・・・・・・故意に突き飛ばされたとか」

「そんな、それじゃあお義父さんは誰かに殺されたっていうんですか!?」

 珍しく大きな声を出したのは美智だった。隣の照子が驚いて目を丸くする。

「いまのところ目撃者はいません。正直なところよく分からないってのが警察の本音でして」

 若い方の刑事が、寡黙な年配の刑事の方にチラチラと視線をやりながら頭を掻いて話を続ける。

「それで、まことに失礼ですが、これも仕事でして・・・・・・皆さんのアリバイを聞きたいんです」

「私たち家族を疑うんですか?」

「いけ、けしてそうのような・・・・・・ただ人を疑うのが警察の仕事でして・・・・・・それに事件か事故かの結論はまだ出てません」

「美智さん、大丈夫よ。そちらの話はよくわかりました。まず私からお伝えします。あの日はマンションの自治会主催の温泉に行ってました」

 嫁を庇うように言った照子が自身のアリバイをはっきりと口にした。

「たしか※※※※温泉でしたよね。宿は※※※荘だったかな」

 質問した若い刑事は、すでに捜査して得ていた情報に照らし合わせて話を聞いていた。
 狡猾で利口なやり方であり、矛盾を追及する捜査機関の手法なのだろう。和義の喉がゴクリと鳴った。その様子に年配の刑事が目をすがめた。

「私は買い物の途中で―――」

「―――何を買ってたんですか?」

 美智が話し終える前に、質問を重ねる若い刑事。

「ゆ、夕食の材料を・・・・・・それと・・・・・・」

「それと―――? 他になにか?」

「いえ、別に・・・・・・」

 夫に頼まれた用事について思い出した美智は、和義の顔を見て出掛かった言葉を濁した。

「・・・・・・そうですか。では長男さんは?」

「私はここから動けません」

「車椅子を使ったら?」

 意地の悪い質問だった。年配の刑事のあからさまな鋭い視線が和義の顔に突き刺さる。

「少しなら」

「1人でマンションの外に出ましたか?」

「いえ」

「・・・・・・」

 若い刑事が年配の刑事に顔を向けて何かを確認するように頷いた。そして、どうもすみませんでした、と言って頭を下げた。

「じつは体の状態についてはあらかじめ病院で話を聞いてましてね。リハビリ頑張ってください。ご家族みなさんのアリバイを聞かせてもらいましたが、これも仕事なもんで・・・・・・それでは失礼します」

 若い刑事が申し訳ないという感じを前面に出し説明を終え、いとまを告げた。

「ああ、そうだ―――このマンションのエントランスに防犯カメラがあるのをご存じですか? 鈴木さんが亡くなられた日のものを確認したんですが・・・・・夕方の時間帯に出入りする人物が映っていたんですがね・・・・・・どうもこのマンションの住人に該当する人物がいなくて・・・・・・まあだからといって、それがどうしたんだって言われればそれまでなんですがね」

 腰を上げた刑事が帰り際に話した内容が、主を失った鈴木家に静かな余韻を残す。刑事たちが帰ると、みな一様に溜息を吐いた。

「なんで俺が頼んだ用事を話さなかったんだ?」

「だって、アリバイとは関係ないでしょ」

「・・・・・・そうだな。関係ない」

「それで美智さん、和義から何を頼まれてたんだい?」

「本です。アガサ・クリスティー? ・・・・・・タイトルは何だったかしら? 探してる途中で連絡があって買えてないんです」

「漫画かい? 落ち着いたら私が買ってこようか?」

 世話焼きの照子が表情の乏しい息子の顔を見て言った。

「ただのミステリー小説だよ。昔読んだことのあった小説なんだ。体がよくなったら自分で買いに行く」

「そうかい。そうだね・・・・・・。アガサ・・・・・・、難しそうなタイトルだね。私じゃ覚えられないよ」

「それは作者の名前だよ母さん。最近もう一回読んでみたくなったんだ」

 明確な理由は浮かばなかった。頼まれていた本のタイトルも思い出せない。美智は本の話をする夫に対して小さな引っ掛かりを覚えた。
 

 ◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇
 

 無職の状態が続いている間宮には、いくらでも時間があった。

 自由に抱ける女がいて、最近ではその女を使って小遣い稼ぎができていた。そのため働く意欲が低下し、昔からの趣味である釣りを楽しむ時間が増えた。

 海釣りである。
 港の岸壁にほど近い場所に車を止めた間宮がクーラーボックスを下ろしていると、普段は使わないメッセージアプリの通知音が鳴った。

「うん? 鈴木か・・・・・・」

 自分の妻を寝取らせている同級生の男からのメッセージ。内容には察しがついた。

 先日、鈴木の父親が駅のホームから転落し、電車に轢かれて死んでいる。寝取らせ計画に至る要因の一つである男の死で、計画の中止を和義が言い出すのでは、と間宮は危惧していた。

『会って直接話がしたいんだが』

『これから? 今日は無理だ』

『忙しいのか?』

『釣りだよ釣り。これから始める』

『懐かしいな。趣味だったもんな』

『覚えてるのか? 中学の頃、一緒に来たことがあったろ。ほら※※※港』

『朝まで?』

『その予定だ』

『1人か?』

『ああ』

『今週末か、来週でもいい。時間を作ってくれ。間宮にとって悪い話じゃないから』

『わかった』

『釣れるといいな』

 内容からして間宮が危惧していたことではなかったようだ。引き続き夫公認で人妻の美智とセックスができると安心した間宮は準備を終えると港の端―――岸壁の上に立て釣りを始めた。


 ◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇

 
 5月の連休を目前に控えた曇り空のその日―――。
  岸壁にほど近い港の一画に車を残して忽然と姿を消した男――――――海上を漂う間宮の死体が地元の漁師によって引き上げられた。(完)

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