奥の扉からシャワーを浴びる音が聞こえていた。
妻の七緒が使用している。
「父さん、さっきのは違うんだ。七緒は少し天然なところがあるから」
「そうかぁ? あんな声をず~っと聞かされてみろ、そりゃ七緒さんだって欲求不満にもなるぞ」
僕はついさっきコンドームの箱を取り出してきた七緒の行動について、父さんに言い訳みたいな説明をしていた。
「僕たちは大丈夫だから―――、普段からあんまり無いっていうか‥‥‥だから、そういう心配はしなくていいから」
「幸人、そういうところだ。いつまでたっても孫の顔が―――」
「―――父さん!」
「わかった、わかった。そう興奮するなって。ただな、二人とも若いんだから我慢は体に毒だぞ。ヤリたくなったらその時は遠慮なく言ってくれ」
「とにかく七緒の前でヤルとかヤラないとか、セクハラ発言はやめてくれよ」
いつの間にか水音が止まっていた。
狭い空間だ。体を拭く七緒の気配が伝わってくる。それは当然、同じベッド上にいる父さんにも伝わっていて‥‥‥ふと隣を見ると父さんの目が奥の扉に向けられていた。
シェルターでの避難生活14日目。
相変わらず隣からの嬌声は続いていた。途切れることなくほぼ毎日だ。
最初の頃は夜の時間帯が多かったが、最近では深夜とか早朝とか不規則に聞こえるようになっていた。
そんな状況下でも僕たち三人は、デジタル時計を頼りに規則正しい生活を続けていた。
「さっ、そそそろ寝るか~」
父さんがベッドから降りて床上で毛布にくるまった。
「はい、お義父さん」
「じゃあ、電気を消すよ」
消灯すると個室内はデジタル時計の画面に照らされて薄ぼんやりとした低照度の光に包まれる。
七緒がいつものように手を握ってきて――――――次第に意識が遠のいた。
『―――うっ、ああぁ……う、あん、あん』
目を覚ますとものすごくエッチな夢を見ていた気がした。
僕の耳には隣からの嬌声が届いていた。
顔を横に向けると七緒も起きていた。
「目が覚めた?」
「はい‥‥‥」
デジタル時計を確認すると午前2時を回ったところだった。
ベッド下からは父さんのいびきが聞こえていた。
隣のベッドが軋む音と微かな振動が伝わってくる。
『ううっ、うう、ああぁ~~~!』
終わりが近いのか嬌声にいっそう熱がこもり大きくなってから―――止まった。
「あなた‥‥‥」
七緒が囁くように言って体を密着させてきた。ものすごく熱かった。
その目を見ると、デジタル時計に照らされた薄闇のなかでも潤んでいるのがわかってしまった。
父さんの言葉が蘇る。やはり七緒も欲求不満なのだろう‥‥‥。
「今からする?」
父さんがいるので我慢していたが、正直なところ普段淡白な僕自身も欲求が溜まっていた。
「はい‥‥‥」
七緒の返答に迷いはなかった。
「大丈夫かな」
「お義父さん寝てるから」
七緒はいつになく積極的で―――だから我慢していたんだと確信した。
そう思うと一気に勃起する。
「じゃあゴムつけるよ」
僕はそう言ってから七緒が包装を破って手渡してくれたコンドームを装着した。
こんなところで妊娠は絶対に避けなければならない。小さなリスクでも回避しようとするのなら我慢だが、もう限界だった。
僕たち夫婦は、父さんを起こさないように細心の注意を払いながら久しぶりの行為に及んだ。
夫婦の営みが終わった頃、床上で寝ている父さんのいびきが止まっていた。


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