船上で寝取られて 第5話

NTR官能小説
 妻の着ているサマーワンピースの背中は大きく開いた形で、薄暗い映画館の中、透き通るような白い肌が青白く浮いて見えていた。
 その背中に近づこうと一歩踏み出したところで、違和感を覚えて足を止めた。

 疎らな客席のはずが、妻の左隣に男の背中が並んで見える。隣の男は考えるまでもなく同室になった学生の田中だとすぐに分かった。
 田中が妻を誘って映画を観に来ているのだから、隣同士で座ることはごく自然であるのだが、僕が感じた違和感というのは、2人の近すぎる距離にあった。

 疎らな客席にあって、妻と田中の肩は不必要に密着し、知らない他の客から見れば2人は恋人同士に映るだろう。
 ―――絵理のやつ、旅先だからって羽目を外しすぎだぞ!
 2人の背中を見つめつつ、僕の中では妻と田中に対して沸々と怒りの感情が湧いた。

 そもそも僕らの夫婦関係は良好過ぎると言っても過言が無く、結婚してからは一度も喧嘩をしたことがなかった。
 当然のことながら僕は妻を信頼している。だから今まで妻の浮気を疑ったり、不貞を想像したことなど一度もなかった。もちろん妻の美貌に吸い寄せられる男達の熱い視線には、日頃から警戒はしていたのだが。
 
 レストランでの食事の場面を思い返す―――、日頃から子育てに追われている妻が、旅先の解放感に浸り、エネルギッシュな若者たちと接することで、少なからず大胆になっていることは感じていた。
 若い男に体を寄せている妻を見て、少しだけいつもと様子の違う妻を観察してみたいと思ってしまった。

 段差を利用した座席には、背もたれはない。2人の背中へ息を殺して静かに近づいた。段差を降りて2人の斜め後方へ位置する。腰を掛けると、すぐに妻と田中の様子を観察した。

 近くで見ると、妻と田中は肩どころか腰までもが密着した状態で、時折、田中の顔が妻の耳元へ近づき何やら話し掛けている様子だ。
 恋人同士のような雰囲気を醸し出している2人に愕然とする。田中は妻に何を話しているのだろうか、まさかとは思うが口説いているということはないだろうか。あれこれと想像していると、怒りの感情とは別に、嫉妬の感情も生まれた。

 スクリーンでは激しいアクションシーンが連続していて、館内は銃撃と爆発の音で満たされている。田中は映画そっちのけで妻の方に顔を寄せ、なにやら懸命に話し掛けていた。妻の方は、田中の話に相槌を打ちながら、笑っているのか、微かに肩が揺れていた。
 
 2人の背中を見つめる中、映画は終盤に差し掛かった。主人公の2人が黒幕と対峙している。僕は田中の顔が妻の耳元に近づく度に、じりじりとした焦燥感に苛まれていた。
 黒幕が主人公の2人に敗れ、ビルの屋上から転落した。僕の記憶が確かなら、この後にヒロインと再会してエンドロールが流れたはずだ。

 怒りと嫉妬心に苛まれている状況では、すぐに妻と顔を合わせる気にはなれなかった。2人を避け、館内が明るくなる前に静かに席を立とうとした。
 その時―――、突然に妻の肩に田中の腕が回された。一瞬、びくりと肩を震わせた妻だったが、何故だか嫌がる素振りは見せなかった。
 
 スクリーンにエンドロールが流れ始めると、僕の目の前で妻の頭が田中の肩に預けられたのだった。

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