見せつける妻

短編 或いは after story
 俺は運送会社でトラックの運転手として働いている。先月50歳になった。
 いま俺の運転するトラックの助手席に座る若い男―――、社長から面倒を見るように言われている、入社2年目の関谷せきやが「今夜飲みたい」と言ってきた。
 
 この関谷を初めて我が家に呼んだ時には、若い俳優の何とか・・・という奴に似ている、と嬉しそうに妻が言っていたのを思い出す。
 運転席から横顔を覗き見ると、確かに少しモテそうな顔立ちだと思う。この関谷という若者は23歳の独身で、俺が面倒を見るようになってからは、たまに家に呼んでは飯を食わせたりしていた。

 配送の帰りに妻の香織かおりへ電話した。
 最初は連れ帰る客の名前を伏せて宅飲みの話をした。妻には、「食材がない」「最近髪を切ってない」「化粧が面倒だ」と言われて見事に拒否されたのだった。
 
 しかし―――、しかしだ。連れ帰る客が関谷だと分ると、一旦断った宅飲みの話を、「もぉ~、しかたないなー」と渋々といった感じをさも・・強調して承諾してくれた。

「村上さんの家じゃなくてもいいですよ。急だから奥さん、怒ってるんじゃないですか」
「大丈夫だ。まえが来るって言ったらオッケーだって。うちの奴、お前の事が可愛いってよ」

 俺と妻の間には子供がいない。
 最近の妻は、若い関谷に対して我が子に接するかのような、場違いというか行き場のない母性を向けることがあった。その点に関しては、ちょくちょく釘をさすのだが、関谷自身もまんざらでもない様子なので最近は目を瞑る事が多かった。

 妻は二つ下の48歳。顔立ちは普通なのだが、肌の色が透き通るように白く、ぷっくりとした唇が印象的な男好きのする女だった。
 アラフィフになって、さすがに体の線は崩れたものの、大きな胸と腰周りに脂が乗り、艶っぽさに磨きがかかっていた。

 ◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇

「いらっしゃい」
 関谷を伴って帰宅すると、一旦は断った妻が満面の笑みで出迎えた。けっ、げんきんなやつだ。

 自宅は集合住宅の一室で、けして広いとは言えない。
 出迎えた妻の服装は、黒いブラジャーの紐が若干透けて見えている真っ白なTシャツと、短パンといういつもの部屋着だった。
 
 短パンの裾は名前の通りものすごく・・・・・短く、宅飲みの際に関谷以外の男の前では着用することはなかった。
 関谷が訪ねてくる度、慣れてきたのか最初キッチリした服装が徐々に崩れてゆき、最近では部屋着になったものの、化粧だけはバッチリときめていた。

「急にすみません。どうしても飲みたくなって」
 関谷は最近になって彼女に振られたらしく、その事は妻にも電話で伝えていた。

「いいのよ。話したいんでしょ。誰だって飲んで忘れたい事があるのよね」
「・・・・・・」

「明日は休みだからゆっくり飲もうや」
「―――はい。いつもすみません。お邪魔します」

 急な宅飲みだったが、よくできた妻は若者の腹を満たすだけの料理を準備してくれていた。料理が出揃うと、妻も缶酎ハイを冷蔵庫から出してきて、俺の隣へ足を崩して座った。

 集合住宅は、板張りの台所以外は全て畳の部屋で、飲んでいる居間兼寝室にはソファーなどの洒落た家具はなく、中央に小さなちゃぶ台と小さなテレビが置いてあるだけだった。

「ごめんねー、こんなものしか用意できなくて」
「いえ、とても美味しいです。正直に言うと今夜は奥さんの手料理が食べたい気分だったんです」

「おいおい、調子に乗るぞ」
「あらそう。じゃあ、あなたは食べないで。関谷君、あーん」
 妻が自分の箸でつまんだ唐揚げを関谷の口に運ぶ仕草をした。関谷は頭に手をやり困り顔で俺を見た。

「食ってやらないと後が怖いぞ」
 俺の言葉に、「じゃあ遠慮なく」といって関谷は顔を赤らめ、妻の運んできた唐揚げを口に入れて美味しそうに食べた。

「それにしても、この時期にエアコンが壊れるかよ。修理はいつ来るんだったかな」
「たしか明後日だったよ。ごめんね、関谷君。扇風機だけで我慢してもらわないと」

 エアコンが故障し、我が家の居間兼寝室は、窓を開け扇風機を回しても蒸し風呂状態だった。窓を開けているので、隣の部屋のテレビの音がいつもより大きく聞こえる。集合住宅では多少の騒音を気にしていたら生活にならない。
 仕事で汗をかき、帰宅すれば蒸し風呂状態の部屋。俺も関谷もビールがすすんだ。

 ずけずけと振られた経緯を聞きたがる妻。喋る事が薬になるのか、堰を切ったように話をする関谷。他人の色恋沙汰にあまり興味のない俺は、2人の会話そっちのけでビールを飲んだ。

 ペースが速かったのか、いつもより酔いが回ったと感じた時、ふと関谷の視線が気になた。俺の勘違いじゃなければ、関谷は妻を―――、特に首から下の方に視線を向けていた。

 狭い部屋で3人だけなのだから、関谷の視線は俺と妻、テレビにしか向かないことは分かっている。気のせいかとも思ったが、しかし、明らかに妻の方を盗み視ている感じがした。

 ビールのペースを落とし横に座る妻を何気なく観察してみた。すると、関谷が妻の何を見ていたのかが分かったのだ。

 蒸し風呂と言っていい環境で、妻のTシャツは汗で濡れていた。濡れたシャツは肌に張り付き、その部分が透けるように見えていた。当然のことながら黒色のブラジャーも薄っすらと透けて見えている。

「香織・・・・・・ 汗がすごいぞ」
 それとなく言って妻に今の状況を気付かせようとした。しかし、「あらそう―――」と素っ気ない返事が返ってきたのみだ。
 
 関谷の視線は、俺の言葉で一旦は妻の体から外れた。若いから仕方がないとも思う。だが俺の妻は関谷から見れば母親くらいの年齢だろう。興奮する訳がない、とも思う。やはり俺の勘違いだろうか・・・・・・。
 しかし暫くすると関谷の視姦が再開された。やはり妻の体を視ているようだった。再開後すぐは遠慮がちで、妻がテレビに視線を向けていたり、台所へ行き来する際にチラリと盗み見る程度だった。いつも職場で可愛がっている若い関谷も男なんだと可笑しくなる。それに若者の目を惹く妻に、まんざらでもないという気持ちになった。
 
 それにしても、あんなに熱い視線を向けられていると、さすがに鈍感な妻も自分が視姦されていることに気が付いているのではないのか―――。

 酒がすすむにつれて、妻の汗の量が増え、そうなると黒いブラジャーがしっかりと見えるまでになっていた。
 その頃には酔いも手伝ってか、関谷の妻に向ける視線から遠慮というものがなくなり、真っすぐな若者の視線を受けた妻までもが開き直るといった事態になっていた。

「もぅー、関谷君。ダメよ。おばさんのどこを見てるのよぉ~」
「・・・・・・だって。透けて見えてるんですよ」
「何が見えてるのぉ? 言いなさいよ」
「し、下着です」
「下着って何」
「ぶ、ブラジャーです。黒色―――」

「あなた、ちょっと聞いた? ブラジャーですって、いやらしいわぁ~」
「香織! ちょっと飲みすぎだろ」
 いつもより酔っている様子の妻を窘めた。顔も上気しているが、本当に酒のせいだけなのだろうか。もの凄く興奮しているように見えた。

「こんなおばさんに何言っているのよ。それとも年上がいいの?」
「年上とかではなくて・・・・・・ 奥さんは綺麗ですよ。だから見ちゃいました」

 ちぇっ、酔っ払いどもめ。と心の中で毒づく。しかしながら関谷は普段から気を許している職場の可愛い若者である。我が家にも慣れ、それに妻もいつになく楽しそうだ。あまりグチグチとは言いたくない。下ネタの延長くらいの会話に思った俺は、盛り上がる2人をよそに、日本酒へ切り替えちびちびとやりながら山場を迎えたテレビの中の野球中継に意識を向けた。

 ◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇
 
 野球中継がCMに入った。さっきまで聞こえていた下ネタトークは聞こえてこない。俺はちゃぶ台から距離を取り背中を反らせるような姿勢の関谷を見た。
 何をやっているのか、と声を掛けそうになり慌てて言葉を飲み込んだ。なんと関谷は、妻の方―――、下半身を一生懸命に覗き込もうとしているようだった。

 横目で妻を見る。足を横に投げ出して座っていたはずが、いつの間にか胡坐をかいて座っていた。否応なしに短い裾の股間部分に視線が向く。おいおい、と心の中で突っ込んだ。実際に俺たちに子供がいればちょうど関谷くらいの年齢だろう。しかし男でもあるのを忘れるなよ―――。

 妻の奔放な態度にため息をついた俺はトイレに立った。関谷の前を通った時に妻の方を見ると、なんと胡坐をかいて座っている短パンの裾から黒いショーツが丸見えだったのだ。 
 当然、関谷の遠慮のない視線に妻が気付かない訳がなく・・・・・・、どうやら自分から積極的に下着を見せつけている様子が窺えた。相当に酔ってやがる。

 歳を取ればトイレが長くなる。勢いよく出ないのだ。
 手を洗って居間兼寝室に戻ると妻が立ち上がった。俺と入れ替わりに台所へ立つ。足取りはおぼつかず、下卑た笑みを浮かべているように見えた。普段の妻からは想像ができない。酒と、子供のように面倒をみている関谷の存在が日常を狂わせているようだった。

 ここでぶっちゃけると―――、俺たち夫婦は長くセックスレスだ。俺も妻も性的な刺激に飢えていたのではないかと思う。いわゆる欲求不満だな。内心、面白くなっていた。

 トイレから戻った俺は定位置に腰をおろし、そのまま寝っ転がった。テレビの野球中継に集中するふりをする。
 つまみを運んできた妻は関谷の前に座った。顔には妖しい笑みが浮かんでいる。そして、ゆっくりと魅せつけるようにして胡坐をかいたのだった。

「―――なあ関谷。今夜は泊ってけよ」
「い、いや・・・・・・ 悪いんで帰りますよ」

「遠慮しないでいいのよ。明日は休みなんでしょ」
 やけに積極的な妻。普段は他人が寝泊まりすることを嫌がるくせに、今夜は自分から関谷を引き留めやがる。

「は、はい。じゃあ、遠慮なく」
「雑魚寝だぞ。それに今夜はエアコンがないぞ。それでもいいか?」

「あなた、泊るって言ってるのに――― 若いんだからエアコンが無くても平気よね」
「はい・・・・・・」
 妻の言動は不可思議だ。どうしてそんなに寝泊まりさせたいのだろうか。まさかとは思うが妙な期待が膨れ上がった。

 ◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇

 関谷が泊っていくことになり、順番で狭い風呂に入ることにした。
 妻が風呂に入っている時に、脱衣場で妻のショーツをこっそりと確認してみる。想像したとおりクロッチ部分に黒い染みが広がっていた。なんていやらしい奴だ。若い燕に体を視姦されて興奮していたに違いない。妻のショーツを手に持った俺の一物は勃起していた。

 居間兼寝室は奇妙な興奮に包まれていた。3人が風呂から上がって、さらに夜更けまで飲み続けた。
 その間、妻の行動はエスカレートしてゆき、関谷の前で体をワザと大きく折って胸元を覗かせたり、横に座って体を密着させ胸を押し付けたりしていた。俺自身も関谷のリアクションを密かに楽しんだ。
 
 普段は堅物な妻の関谷に対する母性―――、いや違うな。牝の本性をさらけ出した行動に俺はもの凄く興奮を覚えた。
 もし、もしもだ。俺が2人より先に寝てしまったら、どんな事が起こるのだろうか。俺の目の届かないところで2人は何をするのだろうか。考えるだけで勃起した一物がドクドクと脈打った。

「そろそろ寝るか」
「そうね」
「はい」
 俺の言葉に2人は同意した。「まだ飲み足らない」なんてことを2人して言い出すのかと思ったりもしたのだが。なんだか、あっけない―――。
 
 俺たちは電気を消して横になった。布団は2組だけだ。関谷に牝の体を見せつけていた妻は、残念なことに一番最初に寝息を立て始めた。

 妄想を膨らませていた俺は、正直残念だった。しかし、ほっとした気持ちもある。まさか妻と関谷があらぬ関係に―――、いや、年の差を考えればあまり現実的でもなかったようだ。
 妻の寝息を聞きながら俺も眠りに落ちたのだった。

 ◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇

 飲み過ぎだった。切迫した尿意で目を覚ますと、辺りは未だ真っ暗だった。周りを見ると雑魚寝していたはずの妻と関谷の姿がない。俺は慌てて起き出した。

 パン、パン、パン―――、肉と肉がぶつかり合う音が響いていた。何をやっているのかは、すぐに理解できた。その瞬間に勃起する。
 音が聞こえる先は、台所の向こう側の4畳半の部屋。尿意を忘れた俺は静かに台所に移動した。するとくぐもった・・・・・妻の喘ぎ声と荒い息遣い、それに2人の会話が聞こえてきた。

「若いねぇ~ すごぉぉぉく硬いぃ。もっと、あああっ、つ、突いてぇぇぇ!」
「お、奥さん、奥さん、好きです、奥さんが好きなんです」

「あああ、ぁあああん、だめ、ダメよぉ――― 簡単に、好きって言ったらぁぁぁ」
「でも、初めて見た時から俺・・・・・・」

「ああ、可愛いわぁ。キュンとなっちゃうぅぅぅん~~~ もっと、もっと突いてぇ、お願い!」
「は、はい。これでいいですか?」
「そう、あああ、深い、深いのぉ――― 奥にあたるぅううん!!」
「―――お、奥さんの声、起きちゃいますよ」

「関谷君が、ああん、可愛くってぇぇぇ――― 声が我慢できないのぉぉぉ。大丈夫、よ。ああん、あの人は飲んだら、たぶん起きないから。ふぁあん、バレたら、関谷君に責任取ってもらうわよ―――」
「は、はい。僕も男ですから。奥さん、いえ香織さん―――」
「―――うぉはぁぁぁ可愛いぃ! おいで、もっと、ああ、もっと気持ちよくしてあげるからぁ~」

 どうやら盛り上がっているみたいだった。妻と関谷のセックスは簡単に終わりそうになかった。俺は扉に耳を付けて勃起した一物を取り出すと、センズリを始めた。
 
 それにしても今夜のセックスはどちらから誘ったのだろうか―――、その時が来たら2人に聞いてみようと思った。

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