擬似、請負い妻 第14話

NTR官能小説
 正式に見合いの日取りが決まった、と木村から連絡があった。療治の夜以来、お互いに忙しく顔を合わせていなかった。
 
 久しぶりの連絡に、あの日の出来事の情景が頭の中で再生された。
 それは記憶を基にしたものだけではなくて、妄想で着色されたものだった。
 
 ―――妻のゆり子と親友の木村のセックス。実際には行われていない、男女の営みの妄想。あの日以来、俺はおかしな妄想に取りつかれていたのだ。
 
 帰宅した俺は、子供を寝かしつけたタイミングでゆり子に見合いの日程を告げた。少し緊張したようだったが、いよいよね、と言ってゆり子は口をつぐんだ。
 
 何を考えているのかは、概ね想像がつく。おそらく本番を前にした木村の精神状態が気になっているのだろう。

 ゆり子が擬似的にセックスの相手をして、ある程度は女性に対する耐性ができている。しかし見合いの日取りが決まったと聞いて、木村が大いに緊張しているであろうことは、容易に想像ができた。
 
 ゆり子は、見合いを目の前にした木村の精神状態が、後戻りすることを心配しているのだ。

 キッチンに立つ物憂げなゆり子の顔を眺めつつ、俺は妄想に浸った。ダイニングテーブルの椅子に座り、ゆり子の気づかないところで勃起していた。

「あいつ緊張してるだろうな。昔からここ一番って時に、ダメなんだよな」

 親友を案ずるセリフを吐きつつ、ゆり子の様子を窺った。

「そうね・・・・・・」

 思案顔のゆり子がテーブルの正面に座った。肘をつき、手の甲に顔を乗せて何事かを考えている。

「来週の日曜日だってさ」

 慎重に言葉を選んだ。妄想を現実にしたいのか、と自問する。自分自身、何を期待しているのか、はっきりとは分かっていなかった。複雑な心境だったが、妄想が頭から離れることはなく、勃起も収まる気配を見せないでいた。

 俺の口からは、自然と誘導するようなセリフが出た。

「電話の声は沈んでたな」

「・・・・・・そう。お見合いの前に、家に呼ぶ?」

 期待していたであろうセリフが、ゆり子の口から出た。鏡に向かっていたのなら、満面の笑みを浮かべていた自分の顔が見えただろうか。

 木村を誘うのは、今回は俺の役目ではなかった。ゆり子自身が、木村を誘う必要があると感じていた。遠慮がちに聞いてくるゆり子の声を聞いて、俺の勃起した一物は大きく脈打っていた。


 ◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇


 見合いを明後日に控えた金曜日の夜、木村が我が家を訪れた。木村を誘った名目は、見合いに向けての壮行会兼作戦会議というところだ。

 あの日以来の再会に、木村はかなり緊張していた。しかし、そこは我妻ゆり子だ。明るく自然に振る舞い、軽いボディタッチを織り交ぜて、木村の緊張を解いていった。

 素の木村に戻ったところで、ゆり子は子供を寝かしつけに一旦寝室へ消えた。子供を抱いてリビングを後にするゆり子の背中に、木村が粘りつくような視線を向けているのを見て、俺の股間は早くも反応していた。

「どうだ、見合いは上手くやれそうか」

「そうだな・・・・・・ 正直わからない」

「そうか―――。女性恐怖症はどうなんだ」

「どうなんだって言われても、自分じゃ分からないよ」

 だろうな、と心中で返した。やはり、ゆり子で確かめなければならないようだった。

「よし、作戦を考えるか」

 ゆり子が戻ってくるまでの間、男二人で一杯やることにした。

 程なくして、ゆり子がリビングに戻ってきた。ホットパンツとTシャツに着替えている。

「ごめん、何時でも寝れるように着替えちゃった。どうせ今夜も飲むんでしょ。って、もう飲んでんじゃん」

 ゆり子が話の輪に加わり、壮行会を兼ねた作戦会議が開かれた。

 作戦会議といっても、ゆり子が女性との接し方をレクチャーする場面がほとんどで、木村は真剣に話を聞いていた。

 俺はその横で、木村の様子を目ざとく観察していた。ゆり子の話を黙って聞いてはいるが、ゆり子が視線を外したりする場面では、俺の存在があるにも関わらず、胸元やホットパンツから覗く太ももを盗み見ていた。

 抑えが効かないのだろう。当然だろうと思う。擬似的にも、一度肌を重ねている女を前にしているのだ。男としては真っ当な反応だ。もしこの場に俺がいなかったら、と考えるだけで俺の一物はドクドクと何度も脈打った。

「提案だけど―――」
 
 密やかな興奮を愉しんでいた俺は、更なる興奮を得るためにゆり子の話に割り込んだ。

 
 ◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇


「―――ホントにいいのか」

「ああ――― 本番まで、時間がないからな」

「・・・・・・あんたがいいなら」

 二度目の療治に向けて、俺は不自然にならないように二人を誘導した。

 俺が向けた話に木村の目は爛々と輝き、興奮を増しているのが手に取る様に分かった。

 抵抗するように思えたゆり子は、意外にあっさりと二度目の療治に考えが向かい、夫としては複雑な心境だった。

 もしかしたら、ゆり子自身も少し期待していたところがあったんだろうか。そう考えると、俺が言えた義理ではないのだが、浮気心を燻ぶらせたゆり子に少しばかり怒りを覚える。

 しかしその怒りは、自身の股間が膨張するとともに小さくなってゆき、すぐにどす黒い欲望に飲み込まれてしまった。

 ―――時刻は、午後9時を回ったところだ。
 
 リビングのテレビには、興味の薄い衆議院選挙関連のニュースが流れていた。療治中は消すにしても、何か白々とした空気になるような気がして、準備中は点けておきたかった。
 
 ゆり子が前回と同じように、リビングの床上に布団を敷いた。
 
 これから行われる事への期待感や酒の影響もあって、何かふわふわとした感覚で療治の準備を見守った。てきぱきと準備を終えると、ゆり子が驚くべき提案してきた。

 その提案を聞いて―――、夫としては、怒る場面ではなかったのか。葛藤がなかった訳ではない。
しかし、下半身の疼きには逆らえなかった。渋々といった感じを出して、ゆり子の提案を受け入れた。

「い、いいのかよ」
 
 頭に手をやった木村が、俺の様子を窺いながら訊いてきた。

「ゆり子に言わせれば、本番に近い方が効果があるということだろう」
 
 自分の中の感情を悟られないように、できるだけ淡々と意識して喋った。

 ゆり子の提案とは、股間に宛がう『ぬいぐるみ』などの緩衝材を使用しない、というものだった。前回の療治が終わった後、タオルケットの下の状況については、二人から正直に説明をされていた。
 
 途中から外れてしまうのなら意味がない、とのことだ。付け加えて、ホットパンツも脱いで行うと、決定事項のように言われた。生地がごわついて、ゆり子が嫌なのだそうだ。

 つまり、ゆり子の下半身はショーツ一枚ということだった。

 ルールを緩和する言い訳じみたゆり子の発言には、いつもの説得力はなかった。どこか急かすような雰囲気も気になった。
 
 俺の股間は完全に勃起し、おそらくカウパーが漏れているだろう。結局、渋々納得する振りをして、ゆり子の提案に頷いた。

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