擬似、請負い妻 第28話

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 ―――週末の昼過ぎに木村夫婦を家に招いた。

 込み入った話になることを予想して、子供は実家に預けていた。
 近くに実家があるということが煩わしく思う時もある。まあ、大体は便利に利用させてもらっている。

「休みに悪いな」

「お邪魔します」

 木村と珠希さん、夫婦揃っての来訪。
 もちろん、ゆり子には木村夫婦の来訪の理由は伝えてあるし、この数日、木村の相談にどうのように向き合えばよいのかを話し合ってきた。

 木村の相談の内容―――女性恐怖症という厄介な問題に触れることになるのなら、今までの経緯についても珠希さんに説明する場面がでてくるだろう。

 正直、悩ましいところだった。
 久しぶりにゆり子と長く会話したようにも思う。

 駅前の居酒屋で相談を受けた場面では、いい解決策を見つけることはできず・・・・・・、結局は俺たち夫婦と木村夫婦で集まって話し合いをする、という運びになったのだ。

 木村は、「珠希にどこまでを話そうか」と言って深刻に悩んでいた。
 
 俺たちが行った世間には言えない秘密の療治。何も知らない珠希さんに告げるべきかどうか。俺には判断ができなかった。

 木村には悪いが、今までの経緯についての説明は、「任せる」とだけ言っておいた。

 俺たち夫婦が揃って木村夫婦と会うのは―――結婚後の挨拶回りで木村夫婦が我が家を訪れて以来で―――珠希さんと会うのは、一方通行・・・・になるのだがあの夜以来だった・・・・・・。

 あの過ちの夜―――あんな場所に珠希さんを置き去りにして1人で逃げ帰った。
 あの時は、今までに経験したことのない大きな恐怖を覚え、正常な判断や感情の全てが真っ黒い何かに飲み込まれてしまっていた。

 目の前で小さな笑顔を浮かべて立っている珠希さんは、あの夜の出来事が夢だったかのように、拍子抜けするぐらいに自然にで・・・・・・見ていると少しだけ安堵できた。

 それでも胸の奥がズキンと強く痛んだことは事実で、なんとか笑顔を作ってみるのだが、自分でも顔の筋肉がこわばっているのが分かった。

 木村の相談内容と珠希さんの抱えている問題を天秤に掛ければ、それはどちらに傾くかなんて分かり切ったことで・・・・・・それでも解決策が見出せない現状では、もどかしい気持ちを抱えながら知らぬふりを通すしかなかった。

 ダイニングのテーブルに向かい合って座る2組の夫婦。どちらも背筋を正して、玄関の雰囲気とは違って少しだけ緊張を纏っていた。

 最初は少しだけ新婚生活についての話題を振ったりして、探り探り会話を進めた。
 そんな雰囲気の中で、意外にもゆり子の方から本題を切り出した。

「キム兄の相談だけど、珠希さんはどこまで聞いたの」
「・・・・・・女性恐怖症のこと。正直に話してくれて少し安心した」

「―――安心?」
「そう、安心。原因が分かったから――― もしかして私になにか問題があるのかなって」

「ほかには、何か聞いた?」
「ほか? いいえ聞いてない」

 ゆり子の含みのある言い方に珠希さんは首を傾げると、隣の木村へと顔を向けた。

「・・・・・・いや、その―――」

 珠希さんの訝しんだ視線に射抜かれた木村が頬を掻いて言葉に窮した。
 それをどのように捉えたのか珠希さんが悲しそうな顔をした。そして何故かチラリと俺の方を見る。

「私に、魅力がないってことなのかな・・・・・・」

 ぽつりと呟くように言う珠希さん。慌てたように木村が声を上げた。

「―――そ、そんなことはないよ!」

「そうだよ、珠希さんは魅力的だよ―――っ痛っーーー!」

 そう言った瞬間に、隣に座るゆり子におもいっきり足を踏みつけられていた。

「調子に乗んな」

「だ、大丈夫ですか?」

 これは失言なんだろうか? ゆり子とは対照的に珠希さんは心配そうに声を掛けてくれた。

「あんたが珠希さん、って下の名前で呼ぶのを聞いたらなんだかムカついた」

 むむ、まさかとは思うが単純に嫉妬という感情なのではないのだろうか? 子供が生まれてから俺たち夫婦はセックスレス気味だった。

 それに、ゆり子と木村のセックスを目撃して以来、俺の心の中で小さなモヤモヤが存在していた。少しだけゆり子の言葉が嬉しいような―――今夜は久しぶりに誘ってみようかな。

「おいおい、新婚の俺たちの前でイチャつくなよ」

「ふふふ、お二人は仲が良いのね」

 呆れる木村と俺たち夫婦を交互に見て可笑しそうに笑う珠希さん。ダイニングを包んでいた緊張が少し和らいだ感じがした。

 これを狙ってゆり子が仕掛けたのなら、恐ろしい女だな・・・・・・。

「こいつは調子に乗るからね。たまに釘を刺しとかないと」

「海原さんって、そうなんだ――― すごく頼りがいのあるように見えるけど」

 ゆり子と珠希さんは通話アプリで普段からやり取りをしているみたいで、そんなに顔を合わせてなくても打ち解けた雰囲気だった。

 それにお互いの口調も敬語ではなく、親しい友人のそれで―――ただ年上の珠希さんにタメ口ってのもどうかとは思うのだが。

「で、キム兄――― どうする?」

 意を決したゆり子の問い掛けに木村が背筋を伸ばした。

「ああ、俺の口から言うよ」

 真剣な表情の木村。
 親友として、これから話すことを珠希さんが受け入れてくれるのか―――、見守るしかなかった。

「―――女性恐怖症のことは話したとおりだ。そんな俺がなんで珠希と見合いができたのか・・・・・・ まだ言ってないことがある。それは治療っていうか、特訓というか―――女性に慣れていない俺に、その・・・・・・2人が色々と協力してくれたおかげだ」

「珠希さん、怒らないで聞いて。キム兄の女性恐怖症の原因は聞いたと思うけど、私たちは女性恐怖症を克服してお見合いが成功するために色々と考えて――― ちょっと言いにくいけど――― 単純に女性に慣れてしまえばいいのでは、って考えたの。それで―――」

唇を固く結び俯く木村。固唾を呑む俺。説明は任せたぞ、ゆり子!

「―――私が手ほどきをしたの」

「えっ!? て、手ほどき?」

「そう、手ほどき。女性に苦手意識があったキム兄と手を繋いだり――― えーっと、だ、抱き合ったりして女性慣れしてもらった」

 新婚の夫婦を目の前にした告白としては、あり得ない内容だった。珠希さんから見れば不貞行為と捉えることもできる。

 しかし、ゆり子の話を聞いた珠希さんの反応は、意外なものだった。

「それは海原さんも知ってたの?」

「はい、俺を含めたみんなで考えたんです。ゆり子と木村が、その――― 抱き合ったりしていた時は俺も立ち会っていたんです」

 軽蔑されても仕方がない内容の話だった。世間体を考えれば、胸を張って話ができる内容ではなかった。

 それでも、少なくとも俺たちは真剣に木村の女性恐怖症の克服を目指して取り組んでいたのだ。

「・・・・・・そう。なら、大丈夫―――」

「珠希さん、いいの?」

「―――はい。だって海原さんが立ち会っていたんでしょ? だから、やましい事だとは思わない。海原さんとゆり子さんが協力してくれたから、私は達男さんと結婚できたのよね」

 自分に納得させるように言う珠希さんの本心は窺い知ることができない。でも、その表情は柔らかく、木村を見つめる珠希さんの瞳は優しい光を湛えているような気がした。

「怒らないで聞いてくれて―――ありがと、珠希さん」

「こちらこそ、正直に話してくれて嬉しいわ。ただ、どんな事をしたのか、ちょっとだけ興味があるかな」

「―――ぐぉほっ、ごほごほ、ごほっ」

 珠希さんの言葉に慌てた様子でせき込む木村。口に含んでいたコーヒーを少し噴き出す。

「た、達男さん―――」

 ハンカチを取り出した珠希さんが木村の口元を拭いてやる。

 そうだような、まさかゆり子とセックスしたなんて珠希さんには言えないような。
 大いに慌てろキム―――それがゆり子を寝取ったお前への罰だ、と自分のことを棚上げして心の中で思うのだった。

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