擬似、請負い妻 第8話

NTR官能小説
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 いつも以上に飲んでいるはずが、今夜は一向に酔うことができないでいた。療治が進み、妻と木村の物理的な距離が縮まるにつれ、俺の頭は冴えてきていた。

「ねえ、少しは慣れた?」
 
 ゆり子の甘えた声が木村に訊いた。俺はテレビに視線を向けたままだ。

「うん。かなり・・・・・・」

「よかった。ねえ―――、もうこんな時間だからさ、今夜は泊まったら」

 歩いて帰るには、やや遠い。今夜のような家飲みの場合、木村は我が家に泊まることが多かった。

 翌日の仕事を理由に帰宅する場合は、代行タクシーを利用したが、それでも大概は俺が強引に引き留めて朝まで付き合わせていた。

 今夜も我が家に泊まるのだろうと、漠然と考えていた。しかし、納得できない。いつもと全然違うのだ。木村を引き留めるのはいつも俺であって、ゆり子ではなかった。

 どちらかと言えば、子供が生まれてからのゆり子は、木村が我が家に泊まることにいい顔はしていなかった。そんなゆり子の口から出た言葉に、小さな目眩を覚えた。
 
「今夜は帰るつもりだったよ。でも、ゆり子ちゃんが勧めてくれるんなら―――」
 
 テレビに向けていた視線をゆっくりとソファに移した。

 ゆり子の肩から名残惜しそうに手を離した木村が、思案顔を俺に向けてくる。木村の手から解放されたゆり子は、体重を木村に預けたまま、上目遣いで俺の顔色を窺っていた。

「遠慮するな。泊まってけよ」
 
 憮然とした声だったのは自分でも分かった。木村とゆり子はどう感じたのだろうか。

「そうよ、遠慮しないで」
 
 俺の言葉に追従するゆり子は、どことなく浮足立っているように見えた。

「―――そうか。じゃあ、甘えちゃおうかな」

「おう。変な遠慮はするなよ」

 虚勢を張った返事だった。何が、甘えちゃおうかなだよ、と内心毒ずいた。人の妻の体に、療治の為とはいえベタベタと触って、全く遠慮しない親友に、腹立たしい思いが膨らんでいった。

「それじゃあ、もう少し続けようよ。私の感覚だったらキム兄は結構なスピードで慣れてきてるよ。もう少しってところじゃないかな」

 俺と木村を交互に見やったゆり子は、納得したように小さく二回頷いた。

 木村が泊まることが決まり、それぞれのグラスに酒が満たされた。飲み直しの段で俺がトイレに立ち、交代で木村がトイレに立った。

 そのタイミングでゆり子が耳打ちしてきた。

「ちょと様子を見てきて。夕方にしっかり食べてるけど、そろそろオムツを交換しないと。それにしても、よく寝てくれるわ」
 
 確かによく寝る。
 今夜は木村が来てから一度も起きていない。普段からよく寝る子だが、この分では夜中に目を覚まし寝かせてもらえないのでは、と不安になる。

 トイレに立った木村が戻らないうちに、子供の様子を確認するためにリビングを離れた。廊下を隔てた部屋に寝かせていた子供は、ぐっすり眠っていて起き出す気配はなかった。オムツは尿を含んでぱんぱんに膨らんでいた。

 起こさないように手早くオムツを交換する。リビングの様子が気に掛かり、手早くするつもりが、逆に手間取ってしまう。朝まで寝てくれよ、と頭を撫でて静かに部屋を離れた。

 リビングに戻ると、俺の目の前で行う、と言ったゆり子のセリフが嘘だったかのよに、早々と療治が再開されていた。
 
 ゆり子は潤んだ瞳で木村にもたれ掛かり、木村の手は後ろからゆり子の腰へ回されていた。

 ゆり子の腰を抱く木村の変化は明らかで、女性に対する抵抗感が少なくなっているようだった。
 療治の目的を思えば、喜ばしい変化ではあった。

 しかし、夫として、妻の体を目の前で触れられている現実は、酷なものだった。抵抗感や嫉妬心がない交ぜになり、それに加えて妙な興奮で股間が熱を帯びた。

 オットマンに座った俺に顔を向けることなく、「どうだった」とゆり子が訊いてきた。ゆり子の視線の先には木村の顔があり、木村の熱っぽい視線もゆり子の顔に向けられていた。

 木村の顔が下を向き、ゆり子が顎を上げているせいで二人の顔の距離がやたら近くに感じた。俺の目には、二人が見つめ合っているようにしか映らなかった。

「オムツは替えたよ。ぐっすり眠ってて起きなかった」

「ありがとう。昼に公園で近所のお兄ちゃんたちに遊んでもらったから、疲れたんだわ」

「お腹は空かないの?」

 夫婦の会話に木村が入ってきた。ゆり子の腰から手を離す気配はない。俺のことは眼中にないのだろうか、質問はゆり子に向けられていた。小さく笑って、ゆり子が答えた。

「大丈夫よ。キム兄が来る前に食べてるから」

 二人の顔が近いので、会話を交わす時のちょっとした頭の動きで、互いの口元が急接近を見せたりする。

「食べる? ミルクじゃないのか」

「バカねえ。もう二歳だよ、乳離れさせないと」

 ふーん、と頭を上下に振った木村の視線が、可笑しそうに言ったゆり子の胸元に向けられていた。
木村の男としての行動が目に付くようになってきた。

 療治の成果が確実に出ているということになるのだが、その分、夫としてはゆり子と木村の距離には十分に気を配らねばならなかった。
 勿論、妻としてゆり子を信頼しているし、親友の事も一線を越えるようなことはしないと信じていた。

 
 ◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇

 
 中夜帯に入り、リビングの照明を間接照明に切り替えた。温かみのある柔らかい黄色の光の中で、照度が落ちるとリビングに濃い陰影が生まれた。
 
 普段ならやすらぎを感じる空間も、今夜行われている事を思えば、淫猥な雰囲気に包まれているような感覚だった。

 テレビには、ニュース番組が終わった後のバラエティ番組が流れていた。相変わらずテレビに集中しているふりを続け、俺は存在を消していた。
 
 あまり見る事もない若手中心のバラエティ番組に、定まらない視線を向けていた。時折、欠伸をしたり、酒を継ぎ足すタイミングでソファをちら見する。

 日常から外れたような夜に、いつもより酔いが回っているのだろうか、木村の顔は火傷かと見まがう程に真っ赤に染まっていた。
 
 ゆり子の腰に回されていた手はいつの間にか動き出していて、ゆり子の脇腹周辺をあやしく擦っていた。
 
 受け身のゆり子は、嫌がる素振りはなく、くすぐったそうに体を動かしたり、小さく低い笑い声を漏らしていた。療治としての触れ合いは、夫としての判断でそろそろ限界が近いと判断できた。
 
 それに、ゆり子と木村の話の内容も、酒の影響が強いのだと思うのだが、なんだかあやしい方向へ流れていた。

「―――えっ!? じゃあ、母乳ってまだでるんだね。飲まなくなったら、出なくなるものなのかと思ったよ」

「出るよ。体質もあるのかな」

「それは需要と供給のバランスが崩れてるな。だから、大きくなったままなのかい」
 
 遠慮のない木村の視線が、ゆり子のブラウスの胸元に向けられていた。

 驚いたことに、ゆり子の胸元のボタンが外れ、下着が見え隠れしていた。確か、先ほどまで、しっかりと上までボタンが掛かっていたはずだった。木村に体を触られても服装に乱れはなかったように思う。

「男って馬鹿。まさか、キム兄までエッチな目で見てたなんて」
 
 怒ったような、拗ねたような口調でゆり子が木村に返した。しかし、その瞳は潤み切って、口元には妻であり母親である女性には似つかわしくない妖しい笑みが浮かんでいた。
 
 一線を越えかねない木村の行為や、相当に酔っているのが分かる二人の危ない会話の内容に神経を集中する。
 
 二人の間に割って入る事を考える一方で、ゆり子に療治を一任し、親友の女性恐怖症の改善が見られる状況で、つまらない下衆の勘繰りによって途中で水を差すことが憚られた。

 あれこれ考えていたのだと思う。
 
 ふっ、と気が付くと視界から二人の存在が消えていて、バラエティ番組が流れるテレビを、ただ眺めている状態だった。
 
 視線はそのままで、慌てて意識をソファの方へ集中させた。

「―――ちょっとだけだって」
 
 木村の囁き声だった。声のトーンから、俺には聞かれたくない内容なのだと分かった。

「ばか。駄目だよ・・・・・・」
 
 妻は叱るような口調だが、どことなく甘い響きが含まれていた。

「ちょっと、ちょっとだけ。ほんのちょっと、触るだけだから」

「触る以外になにがあるの? キム兄のバカ」

「頼むよ、ゆり子ちゃん。女性に対してこんな気持ちになったのは、久しぶりだと思う。だから、ちょっとだけ触らせてくれたら、もっと自信が持てると思う」

「も、もう・・・・・・ ずるい言い方。そういうこと言う?」

 ゆり子の深い溜息が聞こえて、「女性恐怖症の克服のためだからね」と続き、一瞬だけ妻の視線が俺に向けられた気配があった。

 俺の視線はテレビに向いていた。
 妻の了承の言葉以降、ソファの方では沈黙が続いていた。

 俺は生唾を飲み込むと、我慢できなくなり、つまみに手を伸ばすタイミングでちらりとソファに目を向けた。
 そこには木村の肩にもたれ掛っているゆり子の相変わらずの姿があったが、一瞬のちら見程度でも状況の変化が見て取れた。

 ゆり子の腰に添えられていた木村の手が移動して、ブラウス越しにゆり子の胸に添えられていた。
後ろから脇を抱えるようにして腕を回している。
 
 大きな欠伸をする振りで再び視線をやると、添えられていた指先がブラウスにめり込む様子も確認できた。

 ゆり子の療治は、その範疇を超えていた。妻の胸を揉んだ木村も、患者として、俺の親友として大きく一線を踏み越えていた。

 療治を理由に木村を許しているゆり子の顔を窺うと、恥じらうような表情で俯いていて、射るような俺の視線に気が付く余裕がない。
 
 興奮極まった木村は、鼻息を荒くして、言い方が悪いが童貞男丸出し、といった感じだった。

 嫉妬で狂いそうになりながら、制止のタイミングを見計らった。しかし、それでも、自分の妻を信じたい気持ちで躊躇してしまう。
 
 俺の早まった判断で、ゆり子の熟考しての療治を妨げてよいのだろうか。あまり見ていると、俺の視線に気が付いてしまう。迷いが生じた俺は、逃げる様に視線をテレビに向けた。

「も、もう。強くしたらだめだよ」

「あっ! ご、ごめん」
 
 小声のやり取りが聞こえた。非難するゆり子は、木村が謝ると、くすくすと小さく笑った。

「柔らかい・・・・・・ 女性の胸ってこんなに柔らかいんだ」

「そんな感想を言わないで―――」

 衣擦れが聞こえ、会話が途切れた。ソファ上の二人を意識すればするほどに、不思議なもので視線を向けづらくなる。

 しかし、木村の荒い鼻息に、ゆり子の「うっ」「あっ」といったような小さく短い呻きに似た声が聞こえてくると、我慢も限界を迎えた。

 床に落ちたつまみが見えた―――ゆっくりと屈んで手を伸ばしつつ横目でソファの二人に視線を向けた。

 ―――そこには、両胸を揉まれているゆり子の姿があった。

 ゆり子の体は完全に木村の正面にあり、背後の木村に体重を預け両脇から手を回されてブラウス越しに胸を揉まれていた。
 
 木村は遠慮なく両胸を鷲掴み、ムードはもとよりテクニックといった大人の男が備える要素はなく、必死に食らいついている感じだった。

「うっ、うぁん」
 
 童貞の木村の荒々しい愛撫に、ゆり子は声を詰まらせていた。

 夫の俺が見れば一目瞭然で、ゆり子には余裕がなく、荒々しい愛撫に本気で感じ始めているようだった。自分の妻が、夫ではない男に感じさせられている。見なれた妻が、見知らぬ女に見えた。

 木村に感じさせられているゆり子の表情は今までに見たことがなく、艶っぽくて、困惑や恥じらいが同居していた。俺の股間は自然と膨らんだ。

 顎を持ち上げ、白い首筋を捩って木村の方へ顔を向けているゆり子は、俺の視線に気が付くことはなかった。
 
 俺の目の前で、二人の行為は段々とエスカレートしている。俺はゆり子の真意が分からなくなった。酒で判断力が低下しているということがあるのだろうが、考えると恐ろしかった。

 木村の手の動きが時折、円を描いたりして緩急をつけるようになると、ゆり子の呻き声は、小さな嬌声へと変化した。
 
 ゆり子のなまめかしい声に、少したじろいだように見えた木村の喉ぼとけが上下に大きく動いた。困惑気味の表情から、意を決した表情へと変化する。舌を出して、乾いた唇を舐めて湿らせた。

 制止すべき俺の体は、股間が熱を帯び、そこを中心として痺れるような感覚が全身に伝わって動かせないでいた。ゆり子は顔を捻り、せがむ様な牝の表情を木村に向けていた。

 ゆっくりと、木村の顔がゆり子の横顔に近づいた。ゆり子の唇が妖しく濡れていた。再び木村の喉ぼとけが上下する。

 二人の唇が触れ合う寸前、ふっ、と我に返ったようにゆり子が表情を固くした。
 
 顔を正面に戻そうとした一瞬を捉えて、木村の左手がゆり子の頭を押さえつけ、逃げ場を失ったゆり子の唇に木村の唇が重なった。

 驚いた表情で目を見開いたゆり子が、いやいや、と頭を振った。木村の手がその動きをなんなく抑え込むと、ゆり子の抵抗は止み、潤んだ瞳がトロンと溶けたのが分かった。
 
 唇を重ねるだけの接吻は最初だけで、どちらともなく口を開き、貪るようなキスが始まった。

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