寝台上段のカーテンが閉まると、頭上から聞こえていた会話が極端に少なくなった。その代りに、ぴちゃぴちゃ、と湿り気を帯びた音と妻の明らかな喘ぎ声が聞こえ始めた。
「うっ、ううう、はぁう、うっっっん」
色っぽい抑えたような低い喘ぎ声。それは妻が本気で感じている時に発するもので、僕が最近聞けていないものだった。完全に起き出すタイミングを失う―――。
それでも妻の喘ぎ声や淫靡な音に想像を描き立てられ、勃起した一物が何度も脈打つように震えて僕に快感を伝えた。
「ここ弱いんですね」
「はぁぅ、駄目ぇぇぇ」
「体がビクンビクンって反応してます」
「はぁ意地悪・・・・・・ うっうううぁぁぁん」
頭上の2人はどんな状況なのだろうか。
正面から抱き合っているのだろうか、はたまた仰向けに寝転んだ妻に田中が上から覆い被さっているのだろうか、頭の中で妄想が膨らむばかりだった。
実際の行為を覗き見たいという思いが持ち上がる。本当なら頭上の行為を止めるべきなのだが・・・・・・。
「ね、ねえ、聞いて。これ以上は駄目だよ。私たち知り合ったばかりだし、それに―――下には夫が寝てるから・・・・・・」
妻の口から『夫』という言葉が聞こえ、思わず息を止めた。
映画館での出来事で妻への信頼は著しく低下していたのだが、田中を何度も制止する妻の言葉に夫として少しだけ嬉しさを感じてしまう。
「じゃあ僕のを触ってくれますか」
「さ、触る!? も、もう――― いやらし事ばかり言うのね」
田中の要求に戸惑う妻。明確な返答は聞こえてこず、少しの間をおいて寝台が小さく軋んだ。
「どうですか?」
「ちょと、静かにして・・・・・・ 人妻に変な感想を求めない!」
「大きいですか?」
「・・・・・・大きさなんて、そんなのわからないわ」
「旦那さんと比べて」
「バカ―――!」
「―――うっ! そんなに力を込められると――― ちょ~気持ちいいです!」
「本当に馬鹿なんだから!」
2人の会話から妻が田中の一物を手で触っていることが分かる。その声は熱を帯び、年の離れた若い燕に酔いしれているようだった。
僕はたまらず一物を握り込んだ手を上下に動かした。すると快感が全身に広がってなんだか自分も頭上で行われている痴態に参加している錯覚にとらわれる。
「―――っあん!?」
「握ったままで―――そう、離さないでください」
頭上では妻の驚く気配があり、衣擦れの音が聞こえた後に寝台がミシミシと音を立てて軋んだ。
「すごく熱い・・・・・・」
「硬さはどうです?」
「ああ、すごく逞しい・・・・・・」
「っと、動かないで――― ああ、やっぱり奥さんの胸はすごく綺麗だ」
「うぁ! そんなに強く吸っちゃだめよ―――」
ちゅうちゅう、といやらしく吸い立てる音に続いて、妻の切羽詰まった余裕のない声が聞こえた。
「ううっ、ううん、うっ、うう、あああん」
「奥さん、しごいてください」
ギシギシと小刻みに音を立てて軋む頭上の寝台。
僕は頭上から聞こえてくる会話に、自身の一物をしごきながら想像を膨らませる。
―――Tシャツとホットパンツに着替えた妻が、若い欲望が剥き出しの田中に組み敷かれている。頬を赤く染めた妻のシャツの裾は大きく捲られ、露出した白い乳房に田中の唇が何度も吸い付いてはキスマークを残す。
頭を左右に振って悶え感じている妻の手は、しっかりと田中の一物を握り込み―――
みしり、と一際大きな音を立てて寝台が軋んだ。僕は際限なく膨らむ妄想の世界から現実の世界へと引き戻され頭上の気配に集中した。
「お、奥さん、イキそうだ!」
「嘘っ! あっ、あ~ん、だ、ダメ~~~ 白いの出しちゃ、駄目ぇ~~~!」
我慢の限界を迎え絞りだすような田中の声。それに応じる妻の声は、夫の僕が一度も聞いた事のない程に卑しく興奮で震えていた。
「いっ、くうっっっ!」
「きゃっ!! あ、熱い――― あぁぁぁん~~~、白いのが、こんなに―――!」
妻の手こきで田中が射精したのだろう。
寝台の軋みが止むと、頭上の2人の荒い息遣いだけが客室内に響いた。
そして、ぶちゅう~、と濡れた音―――ディープキスを想像させるいやらしい音が聞こえ始めた。
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