ベッドに入ってからも暫くは興奮が収まらなかった。初めて夫を裏切った罪悪感や、それを上回る得体の知れない高揚感が恵美子の体を包んでいた。
目を閉じれば、テーブルを片付けている音が聞こえて、清三を過剰に意識してしまう。恵美子はソファーの方向に背を向けて、タオルケットを頭から被った。程なくして意識が薄れてゆく。
暫くの後―――、薄暗い中で目を覚ました恵美子は、背中に密着する人の気配を感じて息を止めた。
「―――!? あ、あなた?」
驚いた恵美子が、背後の気配に小声で呼び掛けた。
背後から体を寄せている人物からの返答はなく、代わりに太い腕が伸びてきて恵美子の首の辺りに巻き付いた。腕の感触で背後の人物が夫ではないことが分かる。
困惑する恵美子は、突然うなじにキスをされた。熱い鼻息を後頭部に感じて身をよじる。
「い、いや。止めてください」
隣のベッド上でイビキをかいて寝ている夫の存在を気にして、恵美子は抑えた声で言った。しかしキスが止むことはなく、吸い付いた唇が離れるとそのまま耳たぶを甘噛みされた。
「ぁあっ! はぁあ~ん、ダメぇ・・・・・・ で、す。み、みんな、寝てるん、ですよ・・・・・・」
耳たぶを甘噛みされ、全身の力が抜けたようになり体を小さく震わせる恵美子。その様子に満悦の清三が耳たぶから口を離して言った。
「ソファーの寝心地が思ったより悪くてな、目が覚めた」
「だからって、困ります」
寝ている正志の背中に恵美子は視線を向けた。
「ベッドを間違えた」
「そんな―――、早く離れてください」
抗議する恵美子は、体をよじって清三の方へ体を向けた。首には清三の逞しい腕が巻かれたままで、2人は恋人の様に見つめ合う形となった。
「こんな事が知られたら全てが終わりです。お願いですから早く離れてください」
「みんな疲れてよく寝てる。起きないさ」
恵美子は清三の目を見つめて、駄々をこねる子供を諭すように落ち着いて語り掛けた。しかし悪びれた様子のない清三は、見つめる恵美子の顔へ自分の顔をグイッと寄せた。
「―――うぷっっううう!?」
強引に口を塞がれた恵美子は、暫くは体を右へ左へとよじって小さな抵抗を試みていた。その抵抗はキスが長く深くなるにつれて弱まり、最後には恵美子の両目がとろんと落ちた。
◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇
木の匂いの薫るコテージ―――、規則的な寝息が聞こえる中で、独特な臭いと蒸れた空気が部屋中に漂い始めていた。
2つ並んだ片方のベッド上では、タオルケットを頭から被った中で、8本の手足が休むことなく汗だくで絡み合っていた。
周りを警戒して、どちらも上の服は着ていた。しかし下半身はどちらも裸で、恵美子のショーツは片方の足首に引っ掛かっていた。
ベッドがギシギシと軋む音と、息も絶え絶えな恵美子の喘ぎ声が響いている。
「う、ううう、あっっっ~んんんあああ」
「―――し、静かに!」
「う、うっ、うあ、うぁぁぁ」
手の平で口元を押さえられた恵美子が、恨めしそうな目を清三の顔に向けた。その視線には何とも言えない人妻の艶っぽさがあり、清三の腰の動きが否応なく早まった。
「うううっ、あぅううぅっぅうう、うあん」
「恵美ちゃんのエロい顔―――、最高だ―――」
清三の言葉に恵美子の顔が紅潮した。必死に清三の肩にしがみつく。力強くリズムカルで的確に急所を責められた恵美子の腰が自然と動き出した。
「恵美ちゃん、やっとその気に」
「いや~ん。ダメだって、はぁ~ん」
2人はタオルケットを頭から被り、歓喜の咽び声をお互いの口で塞ぎながら情熱的に肌を合わせる。
ゆっくりとした時間が流れる避暑地の夜、禁断の快楽の渦に飲み込まれた2人は隣のベッドの気配に気が付いていない。
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