ベッドに入ってからも暫くは興奮が収まらなかった。
初めて夫を裏切った罪悪感や、それを上回る得体の知れない高揚感が恵美子の体を包んでいた。
目を閉じれば清三が片付けをしている音が聞こえて、過剰に意識してしまう。
恵美子はソファーの方向に背を向けて、タオルケットを頭から被った。程なくして意識が薄れてゆく。
◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇◆
薄暗い中で目を覚ました恵美子は、背中に密着する人の気配を感じて息を止めた。
「―――!? 誰? あ、あなた?」
驚いた恵美子が、背後の気配に小声で呼び掛けた。
背後から体を寄せている人物からの返答はなく、代わりに太い腕が伸びてきて恵美子の首の辺りに巻き付いた。太い腕の感触で背後の人物が夫ではないことが分かる。
困惑する恵美子は、突然うなじにキスをされた。熱い鼻息を後頭部に感じて身をよじる。
「―――ちょ、ちょっと川野さん」
隣のベッド上でイビキをかいて寝ている夫の存在を気にして、恵美子は抑えた声で言った。
しかしうなじ辺りへのキスが止むことはなく、吸い付いた唇が離れるとそのまま耳たぶを甘噛みされた。
「ぁあっ! 耳はダメぇ・・・・・・ みんな、寝てるん、ですよ・・・・・・ 起きちゃいます」
弱い部分を刺激され全身の力が抜けたようになり体を小さく震わせる恵美子。川野が想定した通りの反応を見せた。
「ソファーの寝心地が思ったより悪くて――― 目が覚めた」
「だからって、困ります」
言いながら恵美子は寝ている正志の背中に視線を向けた。
「一緒に寝てもいい?」
「何を言って―――――― 早く離れてください」
抗議する恵美子は、体をよじって清三の方へ体を向けた。
首には清三の逞しい腕が巻かれたままで、2人は恋人の様に見つめ合う形となった。
「こんな事が知れたら全てが終わりです。お願いですから早く離れてください」
「みんな疲れてよく寝てる。起きないさ」
恵美子は駄々をこねる子供を諭すように清三の目を見つめ落ち着いて語り掛けた。しかし悪びれた様子のない清三は、見つめる恵美子の顔へ自分の顔をグイッと寄せた。
「―――うぷっぅぅぅ!?」
強引に口を塞がれた恵美子は、暫くは体を左右へよじって小さな抵抗を試みていた。その抵抗はキスが長く深くなるにつれて弱まり、最後には恵美子の両目がとろんと落ちた。
◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇
木の匂いの薫るコテージ―――。
規則的な寝息が聞こえる中で、独特な臭いと蒸れた空気が部屋中に漂い始めていた。
2つ並んだ片方のベッド上では、タオルケットを頭から被った中で8本の手足が休むことなく汗だくで絡み合っていた。
周りを警戒してどちらも上の服は着ていた。しかし下半身はどちらも裸で、恵美子のショーツは片方の足首に引っ掛かっていた。
ベッドがギシギシと軋む音と、息も絶え絶えな恵美子の喘ぎ声が響いている。
「う、ううう、あっ、ううっ」
「恵美ちゃん、もう少し静かに」
「う、うっ、うあ、うぁぁぁぷぅふぁ――――――」
手のひらで口元を押さえられた恵美子が、恨めしそうな目を清三の顔に向けた。その視線には何とも言えない人妻の艶っぽさがあり、清三の腰の動きが否応なく早まった。
「うううっ、あぅううぅっぅうう、うあん」
「恵美ちゃんのエロい顔――― 最高だよ」
清三の感想に恵美子の顔が紅潮した。必死に清三の肩にしがみつく。力強くリズムカルで的確に急所を責められた恵美子の腰が自然と動き出した。
「恵美ちゃん、やっとその気に」
「いや~ん。言わないで」
2人はタオルケットを頭から被り、漏れ出る咽び声をお互いの口で塞ぎながら情熱的に肌を合わせた。
ゆっくりとした時間が流れる避暑地の夜―――快楽の渦に飲み込まれた2人は隣のベッドの気配に気が付いていない。
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