擬似、請負い妻 第16話

NTR官能小説
 背後から、ぬちゃぬちゃ、という粘着質な音が聞こえてきた。木村がギンギンに滾った肉棒を抜き差しする度に、ゆり子の割れ目から染み出した愛液が絡みついてリビングに淫猥な音が響く。

 両足をがっちりと抱えられ固定されているゆり子は、療治の主導権を早々に明け渡し、擦り上げられる股間の刺激に息も絶え絶えの様子だった。

「ううっ、あ、あぁあああっっっ!」

「いい、いいよ、ゆり子ちゃん。最高に気持ちい―――」

 体位を変えて刺激が増したのか、木村の顔が愉悦に卑しく歪んでいた。抱えられて天井を向いているゆり子のつま先は引きつったように力が入り、木村に与えられている快感の強さを示していた。

 スマホの画面を通して見ている背後のセックスごっこは、普段から隠れて視聴しているアダルト動画そのもので、気を抜くと現実感を失い、自慰に耽ってしまいそうだった。

 だらしなく緩んだ表情で素股を愉しんでいた木村の動きに変化があった。腰を引いてゆり子の股間から少しだけ距離を取ると、片手を竿に添えて改めてゆっくりと腰を前に進めた。

 愛液で滑ったクロッチ部分に、赤く腫れ上がった亀頭が直角に当たると、すぐに離れた。その動きを繰り返す。まるでドアをノックするかのように、単純な動きを繰り返した。

 布越しに膣口をノックされたゆり子の体が、びくり、と反応した。

「―――ダメよ!」

 慌てた声でゆり子が言った。

「そういうのはダメだめだよ・・・・・・」

 両足を抱えられて動けないゆり子は、息を整えたしなめるような言い方で木村の動きをけん制した。

 しかし発した声は何故か蚊の鳴くように細くて小さかった。夫が近くにいるのだから、本当に止めさせたいのならもっと大きな声を出すべきなのだが。

 ゆり子の抵抗の弱さを、肯定的に捉えたのだろう、木村の動きが大胆になってゆく。亀頭はノックを止め、ショーツ越しに濡れ透けている膣口に狙いを定めて押し当てられた。

 竿を握り直した木村は、亀頭をぐりぐりと押し付け始めた。
 
 男としての本能だと思う。目の前に、いやらしく汗をかいた穴があったら、誰だって入れたい衝動に駆られるだろう。

 少しだけ位置をずらせば、ショーツの裾から挿入は容易いように思えた。俺の最愛の妻が、俺の親友に犯られる一歩手前だった。

 画面の中の木村は、俺の方に視線を向ける余裕はないく、ゆり子の股間に集中していた。

「ちょ、ちょっと――― ダメだったら!」

 主導権を奪われていたゆり子は、状況の危うさにやっと気が付いたようだった。我に返ったような表情を見せると、慌てて制止にかかる。

 しかし両足の自由が利かない状態では、上半身を左右に軽くひねる事しかできないでいた。ぐりぐりと亀頭を押し付け続ける木村に対し、ゆり子の制止する声が空しく繰り返された。
 
 その声は、やはり蚊の鳴くように細く小さかった。

 画面を見つめる俺はというと、もっと大きな声を出して助けを求めてくれたら、と静止をしない自分に対しての言い訳を頭のどこかで考えていた。

 いよいよ我慢の限界を迎えた木村が、亀頭の位置を中心からずらした。明らかにショーツの裾の間を狙っているように見えた。

「―――!? キム兄ったら、本当に止めて!」

 木村の意図を察したゆり子の語気が少しだけ強まる。ある程度は本気で拒否していることが分かったが、妄想の具現化を望んでいた俺の体は、その場から動かなかった。

 画面越しに、ゆり子のすがるような視線が突き刺さる。動きのない俺の背中を悲しそうに見つめ、暫くして、諦めたような表情を見せて目を閉じた。

 俺の傍で、俺の妻と、俺の親友がセックスをする。いよいよその時がやって来たのだ。覚悟を決めた途端に、下半身に大量の血液が流れ込むのが分かった。

 「うぇーーーん」

 どこからか、か細い泣き声が聞こえてきた。
 画面越しの二人の動きが同時にぴたりと止まった。挿入の一歩手前だった。俺の中で、ほっとする気持ちと、残念に思う気持ちが拮抗していた。

 子供の泣き声で中断を余儀なくされ、振り返ってリビングの掛け時計を見た。療治を開始してから、ちょうど30分が経過していた。
 
 振り返った俺の方に、四つの熱の籠った瞳が向けられている。

 泣き声だけ聞くと、母親の存在を探しているのか、それともオムツ交換が必要なのかは判断ができない。どちらにしても、俺とゆり子のどちらかが寝室に向かわなければなかった。

 問題は、俺とゆり子のどちらが向かうのか、ということだ。
 
 もしここで、ゆり子が中断して寝室へ向かえば、今夜の療治は今の時点で終わってしまうような気がした。療治の最中ということを考えれば、何もしていない俺が向かうべきだろうという結論に至る。しかしそうなれば、リビングにはゆり子と木村の二人きりになってしまうのだが。

 妄想の実現を強く望んでいる俺には、都合がいい状況でもあった。しかし夫として、妻の操を守りたいという気持ちがどこかにあるのだろうか、自分が行く、となかなか提案する気持ちにはなれなかった。

 卑怯だが、ここはゆり子の判断に委ねることにした。そうすることで、ゆり子の本音が引き出せるとも考えた。
 
 ゆり子が寝室に向かうという判断をすれば、普通に考えれば夫として喜ばしいことである。しかし療治を続けるという判断をしたならば・・・・・・。
 
 請負った責任感なのか、はたまた女としての悦びを選んだことになるのだろうか、内心は分からないが、どちらにしても後悔はないと思った。

 途切れることのない泣き声。俺はゆり子の目を見た。ゆり子も俺を見返してきた。唇を堅く結び、迷うような表情で、暫く固まっていた。
 
 短いアイコンタクトを終えると、ゆり子の瞳の奥が、青白く輝いたように見えた。

「あ、あとちょっとだから・・・・・・ 信太、お願いできる?」
 
 口を開いたゆり子の表情は、人妻のものでも、母親のものでもなかった。言い訳がましい口調で、卑しさが顔から滲み出ていた。

「―――お、おう。任せろ・・・・・・」
 
 この先には、ゆり子と木村の裏切り行為があるのかもしれない。そう思っても、怒りや嫉妬の気持ちが込み上げてはこなかった。正常な感情が興奮で抑え付けられているのだろ。

 重たい腰を上げてから、もう一度ゆり子の方を見た。視線の交わりは一瞬だけで、ゆり子はやましい気持ちからか、避けるように顔を背けた。
 
 さっきまで挿入を試みていた木村も、俺がリビングを出ていくまで悪戯を咎められた子供みたいに小さくなっていた。

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