日曜日の夜。
明日の仕事に備えて早く寝たいところだが、今夜は好奇心の方が勝っていた。
妻と子供はすでに2階の寝室で就寝している。
俺だけ1階に残りダイニングテーブルの椅子にぽつんと座っていた。
目の前にはノートパソコン。カードリーダーにマイクロSDカードを挿入する。画面に表示されたフォルダの中に、動画ファイルを確認した。
ゴクリと生唾を飲み込むと、マウスに添えている自分の指先が震えていることに気がつく。
一旦落ち着くために大きく息を吸い込んでからゆっくりと吐き出す。別に怒りとか恐怖とか、そういった部類の負の感情に支配されている訳ではない。
指先の震えは、ただ単に興奮からくるものだと自分で理解していた。
昨日行われた『人妻バイアグラ作戦』は、残念ながら失敗に終わっていた。
別室で待機していた珠希さんと俺の元に、ゆり子と木村が戻ってきたのはこっちが密かに愉しんだセックスを終え暫く経った頃だった。
申し訳なさそうに頭を下げる木村。その横で、珠希さんを前にして戸惑いを隠せないゆり子の表情が印象的で―――。
失敗の原因は木村が勃起に至らなかったこと、だとか。
ゆり子がパンツ越しに軽くマッサージを施したり、服の上から体を触らせてみたとのことだが、木村の男性器はほとんど反応を示さなかったらしい。
その話を聞いた珠希さんは、少し寂し気な表情を浮かべていた。
もちろん俺は、そんな2人の話を聞いてとてもじゃないが信じる気にはなれなかった。
ゆり子の上気した顔。ほつれ毛が頬に張り付きそこはかとなく気だるげで淫靡な雰囲気を纏っている。
なにより、丁寧に汗は拭ったみたいだが、火照った体から漂ってくる発情した牝の匂いは誤魔化せない。
言い訳を並べ立てる2人を見た時、隠しカメラを仕掛けておいて正解だったと確信した。
はやる気持ちを抑えながら耳を澄ませる。階段や廊下に妻の気配がないことを確認してマウスをクリックした。
画面に大きく映し出されたのは、和室の中央に敷かれた一組の布団。
真横から隠し撮りしている構図だ。
戸の閉まる音が聞こえて画面の中央―――布団の上にゆり子と木村が姿を現した。
ゆり子の格好は着古した部屋着のシャツとゆったりしたズボンという軽装で、木村はジャージー姿だった。
とは言っても、画面上では布団をアップに映しているため立っている2人の下半身しか見えていない。
『キム兄、服脱いで』
『お、おう‥‥‥ゆり子ちゃんも脱ぐよな?』
『えっ、私も!? 脱いだ方がいい?』
『その方が興奮するから』
『はい、はい。恥ずかしいからあっち向いてて』
最近のカメラは安価で画質がよかった。それに小さな音もよく拾う。
イヤホンをつけ音量を上げれば、2人の会話は筒抜けだった。
画面の中の2人が背を向けて服を脱ぎ始める。
しばらく衣擦れが聞こえた後で、ゆり子の声が聞こえた。
『キム兄、なんでパンツまで脱ぐのよ』
どこか呆れたような声だ。
それもそのはずで、木村の一物はすでに半分くらい勃起した状態だった。珠希さんの前では勃起しないのに、ゆり子の体には反応するって‥‥‥色々な方面で罪な男だ。
『ゆり子ちゃんも全部脱いでくれよ』
『必要ないから。これから珠希さんとするんでしょ。私はあくまでもお手伝いだから下着でいいの』
向き合ってから2人の距離が縮まる。
木村がゆり子の体を引き寄せたみたいだ。下半身しか映っていないのがもどかしいところ。
『ちょっと、ま、待って。珠希さん呼ぶから』
『まだだって、ほら―――』
木村の手がゆり子の手首を掴んでそのまま半勃起状態の一物へと導いた。
『あっ―――! ダメだったらぁ~』
そう言ったゆり子の指先が一物に触れると、ピクリと反応を見せた。
それからすぐに、「もうぉ~」と仕方のないように零した声が聞こえ、ゆり子の細い指先が血管の浮き出た肉棒に絡みつく。
『ちょっと柔らかいね。もうちょっとかな?』
『手、動かして』
画面上では、立ったままでの手こきが始まった。
夫のものではない他人棒に指を絡め優しく扱くゆり子の手。
気持が良いのか木村の腰が小刻みに震える。
そしてみるみるうちに、インポテンツが嘘のように木村の一物は雄々しく勃起を果たした―――。
『あぁ硬くなったぁ~』
『ゆり子ちゃん、気持ち良いよ』
興奮の色が滲んだ画面上の2人の声。
互いに顔を寄せ、熱い視線が絡み合っている様子が容易に想像できた。
「勃起しなかったなんて、やっぱり嘘かよ」
そう独り言ちる俺自身も画面上の木村と同じように勃起していた。
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