擬似、請負い妻 第57話(最終話)

NTR官能小説
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 目が覚めたのは冷たいフローリングの床上だった。
 冬物のコートにくるまり身体は寒さで震えていた。

 俺の感覚は朝であることを告げているが、ウォークインクローゼットに窓がないため確信が持てない。

 手探りで床上に転がっているスマホを拾い上げ時間を確認すると、朝の8時を少し回っていた。興奮と嫉妬に自身の倫理観を壊された長い夜を越えたことで、ようやく現実に戻った気がする。

 結局、昨夜のゆり子と木村のセックスは日付が変わってからも続き、俺は何度目かの射精の後で精魂尽き果て二人より先に意識を手放していた。

 頭をクローゼットの戸に近づけ耳を押し当てる。寝室の様子を窺ってみたが二人の気配はなく物音一つ聞こえてこなかった。

 俺の乾いた口から、「はぁ~」という深い溜息が漏れた。安堵と少しばかりの後悔が入り混じった溜息だ。

 昨夜は妻の不貞を直接この目で覗き見るために、危険を冒して我が家への侵入を果たしたわけだが、異常な昂ぶりで周りが見えなくなっていたということもあり、脱出する手立てまでは考えていなかった。

 もし今回のことがバレていたら、と考えてみれば‥‥‥間違いなく2つの家庭は崩壊していただろう。

 音を立てないよう慎重にクローゼットの引き戸を開けた。
 寝室はもぬけの殻だったが二人が交わった熱情が、まだそこに熾火のように存在しているような気がした。

 意を決して立ち上がると、身体の節々が痛かった。
 歩いて入れるクローゼットとはいえ、狭小スペースに変わりはない。筋肉が凝り固まっているのだ。

 それにしても出張終わりにクローゼットの中で身を潜めて夜を明かす経験なんて‥‥‥次があれば必ず寝室にカメラを仕掛けようと思う。

 寝室に移動すると、こんどは廊下側のドアに耳を当てた。
 ドア越しに覗う廊下の様子は静まり返っていて気配はない。どうやら2階は大丈夫そうだった。

 ふと夫婦のベッドに目をやると、そこには不貞の生々しい痕跡が残されていた。
 二人分の汗が染み込んだシーツは、昨夜の行為の激しさを物語るかのようにシワだらけで、掛け布団が行儀悪く床に落ちていた。
 
 それに枕元に近いゴミ箱の傍には、丸められたティッシュペーパーの塊がいくつも落ちていて‥‥‥本来なら安らぎを感じるはずの寝室が、まるで見知らぬ他人の空間のように思えた。

 寝室を後にして廊下に出た。慎重に階段まで移動して上から一階の様子を窺った。すると微かに、「シャー」という水音が聞こえてきた。

 この状況――――既視感しかなかった。
 間違いなくシャワーの音だ。

 1階に下りるとシャワーの音に混じって男女の話声が聞こえてきた。どうやら二人は朝っぱらから一緒に風呂に入っているらしい。
 声がこもっているので会話の内容までは聞き取れないが、それでもこっちが嫉妬するくらいには楽しそうだった‥‥‥。

 ――――今日の二人の行動は‥‥‥メッセージの内容や二人の会話から推察すると、俺が出張から帰るギリギリの時間まで楽しむつもりなのだろう

 そう考えると、和室の隠しカメラを寝室に仕掛け直したいという欲求に駆られたのだが――――いきなり風呂場の方から扉の開く音が聞こえて、シャワーの音が大きくなった。
 慌てた俺は後ろ髪を引かれながらも侵入経路を逆に辿り、勝手口から外に出ることに成功した。

 我が家から抜け出せたのはいいが、夜まで行く当てがなかった。
 近所の目があることから家の付近でうろうろするのは得策ではない。なので荷物を預けていたコインロッカーのある会社の最寄り駅まで戻ることにした。

 駅前のコンビニでコーヒーを買い、オフィス街の一画にあるビルに囲まれた防災用の小さな公園に移動した。
 
 土曜日の朝だ。誰もいないベンチに座って空を見上げると、朝から2度目の深い溜息が漏れた。

 ゆり子が行なった療治以降の色々な出来事が頭の中を巡る。後悔はないが、それでもこれから先の夫婦生活に不安は残るのも事実で‥‥‥。

 コーヒーを飲み干したところで俺のスマホが、「ピコン」と鳴った。
 画面を確認するとそれは珠希からのメッセージだった。

『おはよう。出張お疲れさま』

 彼女とは吾妻の事務所で別れてからこっち、二人きりで会っていなかったのだが、互いの伴侶に隠れてメッセージのやり取りは続いていた。

『おはよう。仕事の方はうまくいったよ。今日帰る。お土産渡すよ』

 返信すると、すぐに次のメッセージが送られてきた。

『ありがとう。会えるの?』

 とうぜん家族ぐるみで、という意味ではない。珠希は二人きりで会いたいと言っているのだ。
 木村には妻を寝取られているが、それでも木村に罪悪感を覚えるほど彼女は俺に対していつも積極的だった。

 会いたい気持ちは俺も同じなのだが、最近は仕事が忙しく、それに珠希は新婚な訳で……なかなか二人の都合が合わないでいた。

『会いたいけど』

『けど?』 

 俺の置かれている今の状況を考えると、珠希からのメッセージはタイミングがよかった。頭の中では昨夜の淫靡な情景が離れないでいる。

 ―――珠希のエロい体をめちゃくちゃに犯してやりたい

 俺の中で真っ黒い衝動が沸き起こった。
 別に木村に対しての意趣返しと言うわけではない。単純に雄として雌の身体を求めていた。昨夜のゆり子と木村のように、欲望に忠実で最高に気持ちのいいセックスがしたい。

『後で連絡する』

 だかしかし、俺は気持ちを抑えて珠希への返答を保留した。妙案を思い付いたのだ。
 いったん珠希とのトークルームを抜けた。一呼吸おいてから、ゆり子へのメッセージを慎重に入力する。

『おはよう。急なんだけど、仕事でトラブルがあって帰りが明日になりそうだ』

 ゆり子は出張からの帰り時間を気にしていた。木村はいけしゃあしゃあと俺の出張が延びればいい、みたいなことを言っていた。

 だから俺が送信ボタンをタップすれば――――。

 
 ゆり子にメッセージを送信してからきっかり1時間後。
 俺はコインロッカーの荷物を取ってネカフェに移動していた。

 ―――そろそろか

 スマホを取り出して珠希にメッセージを送った。

『今日って会えない?』 

 すぐに既読が付いた。もしかしたら珠希も期待してくれてたのだろうか。

『今日?』

『ダメだよな』

『会えるよ。何時頃になりそう?』

 予想どおりの答えが返ってきた。俺の股間が熱を持つ。
 ゆり子と木村はまんまと俺の撒いた餌に喰い付いたのだ。

『夕方かな』

『わかった。でも信ちゃんは大丈夫なの? ゆり子さん待ってるでしょ』

『あとで説明するけど、こっちは大丈夫だよ。珠希のほうこそ大丈夫? 木村は?』

 木村の予定は聞かなくても知っている訳で。
 だが、あいつが珠希さんに対してどんな言い訳をしたのか少しだけ興味があった。  

『こっちも大丈夫。さっき連絡があって地元の先輩に誘われたみたい。帰りは遅いからそのまま実家に帰るって』

 あいつの薄っぺらい嘘を知れて複雑な気持ちになった。もっと慎重に行動してもらわないと珠希にバレたらどうするんだ‥‥‥。だが、感謝しかない。狙い通りの結果だった。
 俺が帰らないとわかった二人は、今夜も俺のいない我が家乳繰り合うのだろう。

『駅に着いたら連絡する』

『待ってる』

 木村の実家の改装が終わると珠希は義理の両親と同居することになる。家業の酒屋を手伝らしいので、そうなれば二人きりで会うのは難しくなるだろう。

 だから今夜は珠希のマンションに上がりこんで明日の朝まであのエロい体をメチャクチャに犯してやるつもりだ。

 今夜は二組の夫婦が伴侶を入れ替えて互いに熱い夜を過ごす。
 こういう複雑で爛れた関係をどう表現するのだろうか。

 互いの夫婦が公認ならスワッピングということになるのだろう‥‥‥。
 同じ部屋の中で夫婦交換して見せ合いながらするセックス。それとも木村に妻を貸し出して珠希との3Pをさせ、それを俺が隠しカメラで覗いたり―――いずれはそんな関係に発展しても悪くはない。
 
 そこに至る問題は多いだろうが、夫婦を交換できる関係を築けたとしたら―――そんな身勝手な妄想が膨らむだけで俺の一物はカチカチになった。(完)

         人妻秘書ゆり子~セクハラに穢されて

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