木村の上でカウガールのように腰を振る我が愛妻。
腰を落とす度に丸みを帯びた柔らかい臀部の肉が波打つ。
カメラは2人の痴態を真横から映していた。喉元を晒して天井の方を向いたゆり子の横顔は娼婦のように淫らで、それに普段の姿からは想像もできないほどだらしのないものに映った。
だから余計に興奮した。良妻賢母としての顔と画面上で見る娼婦のような振る舞いの顔。そのギャップに俺の下半身は既に限界ギリギリで。
暫らくしてゆり子がブラジャーの紐に手を掛けた。するりと外すと下から木村の手が伸びる。そして露わになった産後にやや大きくなっている乳房が揉みしだかれた。
『う、うう‥‥‥あん、あはぁ~ん!』
やや抑え気味だった喘ぎ声が、乳首を摘ままれると大きく弾けた。
ゆり子はイヤイヤをするように頭を左右に振ってから体を前へ倒す。それを木村の腕が下から抱き止め、顔と顔が重なると深いキスが始まった。
その間も妻の腰の動きは貪欲で―――快感に耐えかねたかのように木村の腰も動きだす。
次第にシンクロする2人の腰の動き。ものすごい快感に違いない。不貞の味を知っている俺にはよくわかる。
夫として妻の裏切りは腹立たしく思うが、親友の木村に対してはお互い様というところ。
口を離した画面上の2人が何やら小声で話を始めた。
さすがに隠しカメラのマイクでは囁き声を拾うことはできないが、いつもより親しい雰囲気が伝わってくる。
短い会話の後に見つめ合ったと思ったら、こんどは小さな笑い声が聞こえた。まるで隠れてイチャイチャしているカップルみたいだ。
そう思うと俺の一物がビクビクと脈打った。どうやら嫉妬と興奮は比例するらしい。
2人の体が一旦離れた。ゆり子が仰向けに寝転ぶと反対に木村が体を起こす。
体位を変えるみたいで、そのやり取りに手慣れたものを感じてしまい、またしても俺の一物が脈打った。
『あんまり時間がないからね』
『わかってるよ』
ゆり子が両足を開いて股を広げた。まるで何回も秘部を晒したことがあるように、なんの遠慮もなく。
木村の体が股の間に入り込み、ゆり子の太ももを両腕で抱え腰を前に進めた。
『―――うっ‥‥‥うぁあああん』
ゆり子の顎が挿入の合図と言わんばかりに上を向く。
イヤホンから聞こえる嬌声は間違いなく俺の愛する妻のもので。セックスの相手が夫じゃなくてもこんなふうにいやらしく鳴くのか‥‥‥。
画面を食い入るように見ていると堪えてきた射精感が込み上げてきた。溢れ出すカウパーが潤滑油となり扱く手に自然と力が入る。
『やっぱり、ゆり子ちゃんの中は気持ちいい』
『キム兄のばかぁ~、新婚なのになに言ってんのよ~って、あ~ん、深いってばぁ、ああ、うぁあああん』
喘ぎ声を我慢できないゆり子の両足が木村の腰をホールドするように巻きついた。いわゆるカニバサミだ。それは挿入された一物を深い所で感じたいがための行為。俺は今まで性に対してこんなに貪欲な妻を見たことがなかった。
画面上で再生される寝取られセックスは大きな興奮と衝撃を俺に与えた。体全体が高揚感に包まれ2人の腰の動きに合わせ寂しく一物を扱く。
あまりの刺激に一度射精しようかと考えたところで、画面上の木村が口を開いた。それは深く繋がった正常位でのセックスが5分くらい続いた頃だった。
『信太が出張の時に来ていい?』
俺は来月2泊の予定で出張が決まっていた。
木村はそのことを言っているんだろうが、さすがにそれは―――木村には珠希さんという奥さんがいて2人は新婚だ。賢くて常識のあるゆり子が認めるはずはない。いや、夫として認めないで欲しい。
2人のやり取りを聞いていハラハラしつつも一物が硬さを増した。その証拠に鈴口からどろりとした大量のカウパーが吐き出される。
『だ、ダメに決まってるじゃ―――うっ‥‥‥ない。キム兄には珠希さんがいるでしょ』
『だからだよ。あともう少しで珠希とセックスできる気がするんだ。ゆり子ちゃんには感謝してる。女性恐怖症は改善されてるし、それに‥‥‥』
『それにって、何?』
『ゆり子ちゃんとのセックスがめちゃくちゃ気持ちいいから。ゆり子ちゃんも気持ちイイだろ?』
そう言った木村の腰が焦らすように動きを止めた。
『あっ‥‥‥!? バカぁ~何言ってるのよ。もう全然セックスできてるし、そろそろ自信を持ってもいいよ、キム兄』
『ほんとに? じゃあゆり子ちゃんは俺とのセックス気持ちいい?』
そう言った木村の腰がゆっくりとしたストロークを開始する。
『ぐうぁあああ‥‥‥あぁあああ』
焦らされ反動なのか、ゆり子が絞り出すように淫猥な声を上げた。
『どう? 正直に言ってみなよ、ゆり子ちゃん』
『き、気持ちいい―――あ、ああ‥‥‥うぐぁ~』
『じゃあ、こんどはゆっくり。な、いいだろ』
『もう会わないって言ったのに、う、うう、バレたらどうするの?』
『大丈夫だって。絶対にバレないようにするから。だから2人でゆっくり楽しもうよ』
『あっ、めちゃ深い、ああぁそこ気持ちいい―――わかったから、キム兄、今日は時間がないから早く、うっ、して‥‥‥』
もう会わない? 今日は時間がないから? 画面上のゆり子は確かにそう言った。その言葉がやけに耳に残る。
『中に出していい?』
『許可なんて、う、あっ、できる訳、は、はっ、う‥‥‥ないでしょ。ぁあ、ぐぅ―――』
木村がスパートに入ったみたいで、突き入れる腰の動きが早くなった。
『ダメだって、キム兄、駄目! ダメよ、ダメ、ああん』
画面上のゆり子の両足は中出しを拒否する言葉とは裏腹に、木村の腰をがっちり挟んでロックしたままで。
だから動画を視聴している俺からすれば2人のやり取りはとんだ茶番に見えた。
『イクよ、ゆり子ちゃん』
『う、うぁ、うぁん、時間がないから、早く‥‥‥』
腰を振り立てながら木村がゆり子にキスを求めた。応じて突き出されたゆり子の赤い舌は唾液で濡れそぼっていて、卑猥な別の生き物に見える。動画の解像度が高く互いの舌がいやらしく絡み合う瞬間までもが鮮明に映っていた。
正常位で深く繋がって、そんな恋人のような接吻を見せつけられれば、もう限界だった。あらかじめ用意していたティッシュを手に取る。
画面上ではディープキスをする2人の密着した腰が大きなうねりを見せた。そして、ゆり子の体が小刻みに震えたと思ったら木村の腰がぴたりと動きを止めた。
―――それはゆり子が中出しされた瞬間だった。
過去にゆり子と木村は俺に隠れてセックスをしていた。その場面は俺も目撃している。
だが、画面上の手慣れた様子の2人には違和感しかなかった。もしかして2人は俺の知らない所で関係を持ったことがあるのかもしれない。
そんなことを考えながら鈴口に当てがったティッシュの中へ嫉妬の炎に炙られた熱いザーメンを吐き出した。
◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇
10月中旬の平日―――。
仕事の合間に1人で訪れた場所は、裁判所にほど近い裏通りにある雑居ビル2階のとある1室。
「失礼します」
「こんにちは、海原様ですね?」
「あ、はい。約束の時間には少し早いんですが」
「大丈夫ですよ。こちらへどうぞ」
応対してくれた若い女性に案内されたのは簡易な仕切りの向こう側で、そこには事務机の椅子に座っている50代前半くらいのくたびれたスーツ姿の男性がいた。
「先生、お客様です」
「いらっしゃい、海原さん。この後ちょっと用事があってね。調査は終わってるんで早速本題に入りましょうか」
「よろしくお願いします、伊達先生」
机の上には山積みになった書類が所狭しと置かれていた。
事務所はワンルームの小さな部屋で、圧迫感の拭えない四方の壁は今時珍しくタバコのヤニが付着し黄ばんでいた。
お世辞にも流行っている事務所には見えなかった。
正直、不安な面の方が大きい。それでも相談を聞いてい具体案を示したのはこの民事専門の弁護士だけだった。
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