船上で寝取られて 第7話

NTR官能小説
 頭上・・・から2人の話し声が聞こえていた。寝ている僕を気にして2人の声は小さい。しかしどんなに声量を絞ろうとも、頭の真上で話をされれば会話は筒抜けだった。

 妻の寝台に田中が移動してから、すでに30分以上が経過していた。食事はとっくに終わっている。
 寝ているふりを続けている僕にとっては想定外の成り行きであり、妻への信頼が再び揺らいでいた。

 一向に会話の終わる気配が見えない―――。

「ねぇ、ガイドブック持ってる? 違うのが見たくって」

 妻の言葉に、「ありますよ」と言って田中が寝台を往復する気配があった。
 自分の荷物の中からガイドブックを取り出して妻の寝台へ戻ったのだろう。ギシギシと軋む寝台の音がやけに耳障りに感じた。

 頭上からはガイドブックをめくる音と、楽しそうに会話する声が聞こえていた。
 
 ―――寝台の壁側に背を預け、肩を並べた2人が仲良く1つのガイドブックを見ている光景が目に浮かぶ。

 寝たふりを続けている僕は、耳をそばだてて2人の会話に集中した。

「それにしても旦那さん、よく眠っていますね」

 田中の話がガイドブックの内容から逸れた。

「本当ね。普段より眠りが深いかも・・・・・・ 酔い止めってすごいのね」

「起こさないようにしましょう」	
 
 妻と田中は、僕の狸寝入りを信じているようだ。
 再びガイドブックのページをめくる音が聞こえ、暫くは北海道の話で盛り上がっていた。そんな中、不意に楽しそうな会話が途切れた。頭上の寝台がギシギシと音を立て軋む。

「うぷっ――― た、田中君!? ・・・・・・駄目だよ」
 
 驚いた様子の妻の声が聞こえた。言葉の後半は、子供を優しく叱るニュアンスだった。

「―――すみません。奥さんが綺麗だから、つい・・・・・・」

「もう~大人をからかうような事を言わないの」

 会話の内容から、田中が妻に対して何か良からぬ事をしたのは想像できた。
 しかし制止の言葉を口にした妻に、本気で嫌がっている様子は窺えなかった。

 本当はこの辺りで起き出してしまえばよかったのだが、妻の不可解な様子に腹が立ったということもそうなのだが―――男としての好奇心が膨らんでしまいもう少しだけ寝たふりを続けることにした。

「映画館では許してくれたのに」
 
 子供っぽく拗ねる口調で田中が言った。

「・・・・・・はぁ~、渡辺君が戻ってくるまでよ」

 大きな溜息を吐いた妻は、渋々といった感じで田中の良からぬであろう要求を受け入れたのだ。
 
 ―――頭上の寝台が小さく軋む。

 2人の声は聞こえてこない。さっきまでの楽しそうな会話にかわり、2人の生々しい息遣いだけが船室に響いていた。

 次第に気が気ではなくなる僕は、妻が田中に何を許したのかを想像した。
 一体何をしてるんだろうか?

 静かに上半身だけを起こして耳の位置を高くする。2人の息遣いがますます大きく聞こえた。僕の頭の位置のすぐ上に2人の気配を感じる。

 ―――肩を抱かれているのか?

 映画館で見た光景が脳裏に蘇って、僕は息苦しさを感じた。

 不意に会話が再開した。

「こんなおばさんなのに・・・・・・ なんだか若返ったみたいだわ」

「おばさんだなんて――― 奥さんは若いですよ。それにすごく綺麗です。さっきから僕の心臓が緊張でドキドキしてます」

「お世辞が上手ね。女性に慣れてるように見えるわ。本当は緊張なんてしてないでしょ」

「ドキドキ鳴ってますよ。胸の上から、ほら―――」

「ちょっと!? あっ、あ~~~本当だね、すごくドキドキしてる」

「奥さんが触るから、ほら興奮して心拍数が上がりましたよ」

「こ、興奮? おばさんで興奮したの?」

「正直に言うと―――――― もう我慢できません!」

「あっ! だ、駄目よ。ちょっと田中君、駄目、駄目、タイム、タイムってば! くすぐったいよ」
 
 頭上からはギシギシと激しく寝台が軋む音が鳴り、田中を制止する妻の声が聞こえた。
 夫としては緊迫する場面だったのだが、残念なことに妻の声には全く緊張感というものがなかった。

 そう、悲しいことに、まるで恋人同士がじゃれ合っているようにしか思えない・・・・・・。

 夫としては、そろそろ起き出して2人の間に割り込まねばならなかった。寝台での男女のやり取りなのだ。このままエスカレートすれば取り返しがつかない事態も想定される。

 ―――しかし、体は思うように動かなかった。

 何故なら、愛している妻の貞操の危機を目の前にして――――――僕は激しく勃起していたから。

「駄目だって。ね、起きちゃうから・・・・・・」

「ちょっとだけ」

「ちょっとだけって、なによぉ。ちょっとだけでもダメなの~~~、っはぁん―――」
 
 迫る田中の声に、甘えるような響きの妻の声。
 その声が途切れて―――、ちゅっ、ぶちゅっ、ちゅと連続する粘着質な音が聞こえた。

「キスは駄目よ」

 粘着質な音の合間に、絞り出すような妻の小さな声が聞こえた。

「静かにしてください。旦那さんが起きちゃいますよ」

「ああん、ズルいぃぃぃ~~~」

 ギシギシと軋む頭上の寝台。ちゅう、ぶちゅう、ちゅっ、ちゅ―――、と聞こえてくる粘着質な音が次第に大きくなる。

 そんな中、頭上の寝台がメキメキと大きく軋んだ。

「奥さん手を、そう、こっちへ回して」

「えっ!? ちょ、ちょっと、もう――― こんなところを見られたらどうするの」

「大丈夫です。もっと強く、ほら―――」

「こ、こう? 嫌だぁもう~~~ 抱き付かないの、あっ、ダメだよ~、う、うぷっ」

「ぷはぁ~奥さんのキス、美味しです」

「若いのにいやらしい言い方ね。おばさんに変な事を言わないで。これ以上は駄目だから」
 
 田中の言葉に、まんざらでもない様子で妻が言った。

「本当に駄目なんですか? 試してみます?」
 
 田中が悪戯っぽく言うと、頭上の寝台が再び大きく軋んだ。

「―――ちょっと!? 駄目よ、そこは弱いん、ひっん!」

「もう少し静かにしてください。起きちゃいますって」

「あああ、も、もうズルいんだから」 
 
 会話が途切れて、頭上ではごそごそと動く2人の気配だけがあった。会話の内容から2人の行為は容易に想像できる。
 
 妻が夫以外の男とキスをしたことは到底許せることではない。ここまでだ。ここで2人を止めなければもう後戻りできなくなってしまう。
 
 それでも―――おかしな興奮に包まれた僕の体は下半身の一部を除いて全く動かなかった。天頂をついて激しく勃起した一物だけがドクドクと脈打つ。

「田中君、ちょ、ちょっと待って。カーテン、閉めるから―――」
 
 妻の抑えた声が聞こえると、僕の片手は自然と勃起した一物を握り込んでいた。

 真上から目隠しのカーテンが閉められる音が聞こえてきた。

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